今回紹介する小説は芥川龍之介の短編小説、「藪の中」です。
小説の内容は、藪の中で男の死体が見つかります。検非違使に尋問された証人たちの証言と当事者の告白がなされるのです(検非違使に問われたる木樵の物語、検非違使に問われたる旅法師の物語、検非違使に問われたる放免の物語、検非違使に問われたる媼の物語、多襄丸の白状、清水寺に来れる女の懺悔、巫女の口を借りたる死霊の物語)。
皆の証言は説得力があるように思えます。しかし、それぞれ矛盾しており、真相は隠されています。余談ですが、この話をもとに、ー関係者の証言の食い違いなどから真相が不分明になることを称して「藪の中」というようになりました。小説の中では誰も真実を知ることができません。 各人が嘘をつくことによって理想的な自己を示し、現実に自分の弱さを隠しているのです。生きるための悪という人間のエゴイズムを克明に描き出した小説です。
なお、私が好きな黒澤明による映画『羅生門』は、この『藪の中』を原作としています。羅生門の由来は朱雀大路にある平安京の正門の羅城門のことです。映画「羅生門」の影響で、それぞれの見解が矛盾してしまうことを「羅生門効果」と呼ぶようになりました。
by Fujii-group
| 2019-10-31 18:59
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