論文がアクセプトされました。良いデータが出たときは「やったー!」ですが、論文が通ったときは「良かった」という気持ちになります。特に今回は原稿が出来上がってから〇年もかかったので、本当に良かった、です。長い闘いでした。
骨格筋の培養細胞を電気的に収縮させると、それが刺激となってマイオカインが分泌する。このことを証明したという内容です。マイオカインは「運動によって筋肉から分泌されるもの」と知られていますが、それを示す科学的なデータはありませんでした。
思えば、これは僕がポスドクとして首都大に来て初めて取り組んだテーマでした。朝に実験を開始して、サンプルを回収し終えるのは夜。それを週3日くらいのペースで続けます。サンプルが取れたらマイオカインが分泌されているかの分析をして、そのフィードバックを次のターンにつなげます。1年間くらいはマイオカインが分泌される条件設定に没頭していましたが、条件なんて無限にあります。一体いつになったらその条件を見つけられるのか、いや、そんな条件なんて無いのかもしれない。馬車馬のように実験を繰り返したのを思い出します。もう一度やれと言われれば躊躇しますが、細胞の収縮実験がしたいと思ってラボに入った僕は楽しんでやっていました。(感覚が麻痺して、ポジティブな結果が出ないことにも慣れていたのかもしれません)
大きく前進したきっかけは共同研究者に入っている青木美穂さんの実験でした。細胞はすごく繊細で、電気刺激をする以前に培養液が交換されるだけで、実は大量のマイオカインを分泌しているのでした。それに気づけたことが大きかったです。
もう一人の共著者、高木さんにはこの実験のノウハウだけでなく、「実験データはこれだけのスピードで出すのだ!」ということを(背中で)教えてもらいました。研究者としてのプロ意識を学びました。
無事に論文が通ったので、今日、再分析を要求されたときのために残しておいたサンプルを全て廃棄しました。思い入れのあるサンプルだったので捨てるときは寂しい気持ちになるかなと思っていましたが、スッキリ爽快!気持ち良く捨てて記念写真を撮っておきました。
今はその延長上にある新たなテーマに取り組んでいます。あまり後ろは見ずに前を向いて進んで行こうと思います。
Evidence for acute contraction-induced myokine secretion by C2C12 myotubes
Furuichi Y, Manabe Y, Takagi M, Aoki M, Fujii LN. PloS one
PS: ラボミーティングでは藤井先生からのBaselのケーキでお祝いをしました。