Mitochondrial Dynamics Is a Distinguishing Feature of Skeletal Muscle Fiber Types and Regulates Organellar Compartmentalization
著者:Prashant Mishra, Grigor Varuzhanyan, Anh H. Pham, David C. Chan
2015, Cell Metabolism 22, 1033–1044
要約:
今回の論文は筋線維タイプ、運動およびエネルギー基質の違いによって骨格筋内のミトコンドリアの形態がどんな変化を引き起こすか追った論文です。ミトコンドリアにおいておこるエネルギー生産反応である酸化的リン酸化経路(OXPHOS)をより使う筋線維や状況にあるほどミトコンドリアの融合がおきるというものです。また、この融合に関してMitofusin 1 (Mfn1), Mitofusin 2 (Mfn2)のどちらかが必要であることが示されています。
加えて、一つの細胞内(筋線維内)に複数の核を保持している骨格筋細胞において、一つの核がどの範囲までのミトコンドリアを制御しているのかについて、サテライト細胞を用いて示されています。結果、細胞質中に存在するタンパク質は筋線維全体にわたって拡散し、ミトコンドリアに向かうタンパク質は、発現された核の近傍において筋線維内にパッチ状にとどまることが示されました。また、この支配領域に関してもミトコンドリアの融合に関連するMfn1, Mfn2および分裂に関連するMitochondrial Fission Factor (Mff)が関連していることが示されました。
結果:
全体を通して、ミトコンドリアの形態観察はミトコンドリアへ移行する蛍光タンパク質(Mito-Dendra2)を持った遺伝子組み換えマウスを用いています。
Fig.1,2では筋線維タイプ別にミトコンドリアの形態が異なることが示されています。エネルギー産生過程においてOXPHOSによる反応に依存しているとされるType IおよびType IIAではミトコンドリアの融合が数多く観察され、このタイプに分類される筋線維は筋線維上のどこかで必ず融合した伸長型のミトコンドリアを持っていることが分かりました。一方、OXPHOSに依存しない筋線維タイプであるTypeIIxおよびType IIBでは観察した筋線維内のうち90%は伸長型のミトコンドリアを持っておらず、断片型のミトコンドリアのみ筋線維内に保持していました。Fig.3ではこの融合がどんな分子の関与によって生じているのか調べました。著者らは先行研究における知見からミトコンドリアの融合に関連するタンパク質であるMfn1, Mfn2に注目しました。野生型マウス、Mfn1のみノックアウトマウス、Mfn2のみノックアウトマウスおよびMfn1とMfn2のダブルノックアウトマウス(WKOマウス)を用いて、ミトコンドリアの形態観察を行ったところ、WKOマウスのみにて伸長型のミトコンドリアがなくなることが確認されました。この結果から伸長型のミトコンドリア生成にはMfn1もしくはMfn2の少なくとも一つが必要であることが明らかとなりました。
Fig.4では運動とエネルギー基質によるミトコンドリアの形態への影響を観察しています。運動による影響については蛍光タンパク質によって筋線維タイプ別に色分けができるマウスを用いて、4週間自主的運動をさせました。その結果、運動群ではType IIxもしくはType IIBからType IIAへのタイプ移行が足底筋において生じました。蛍光タンパク質による色分けによりType IIAである筋線維においては、必ず伸長型のミトコンドリアが含まれていることが明らかとなりました。続いて、エネルギー基質による影響を観察しました。長趾伸筋を取り出し培養皿において、OXPHOSを使用しなくてはエネルギーが生成できない基質(アセト酢酸)にて一晩培養を行ったところ、Type IIxとType IIBにおいても断片型が消失し、伸長型のミトコンドリアが観察されました。
Fig.5では多核細胞である筋線維において、筋線維内にある一つの核がどのくらいの範囲を制御しているのかについて調べました。タモキシフェン誘導により骨格筋の組織幹細胞であるサテライト細胞特異的にMito-Dendra2を発現するマウスをタモキシフェン誘導なしに使用しました。これは、一定の確率でタモキシフェン誘導なしでもシステムが作動してしまうというシステムの「漏れ」を逆手に利用した方法です。これにより、漏れのおきたサテライト細胞由来の核が筋線維に供給されることで、多核細胞である筋線維において一つ一つの核がどの領域までのミトコンドリアを制御しているのか蛍光観察によって調べることが可能となります。また今回は、Mito-Dendra2と同時に細胞質に向かうタンパク質として黄色い蛍光タンパク質(YFP)をこのシステムに組み込み、筋線維内における蛍光を観察しました。その結果、細胞質中のタンパク質(YFP)は筋線維全体に拡散していることが確認された一方、ミトコンドリアに向かうタンパク質(Mito-Dendra2)は、核の近傍にのみ局在し、特定の領域があることが示されました。さらに、このミトコンドリアの制御領域はType IIAにおいてType IIxやType IIBに比べて大きいことが明らかとなりました(Type Iは今回見ていなかった)。Fig.6ではFig.5で観察された制御領域の大きさがどんな分子によってコントロールされているのかについて追った実験です。ここでは、野生型マウスに加え、Fig.3で登場したMfn1, Mfn2のWKOマウスとミトコンドリアの分裂に関連のあるタンパク質であるMffに突然変異の入ったマウス(Mff-マウス)をそれぞれ用いて、Fig.5のシステムを組み込み、再度筋線維内のミトコンドリアの制御領域の大きさについて観察を行いました。結果、WKOマウスではミトコンドリア制御領域が小さくなり、反対にMff-マウスでは領域が大きくなりました。
以上のことから、OXPHOSをたくさん使う筋線維や代謝環境においては、筋線維内のミトコンドリアの伸長がおこり、その伸長制御にはMfn1かMfn2の少なくとも一方が関与していることが分かりました。加えて、筋線維内のミトコンドリアは近傍の核によって制御されており、こちらもOXPHOSをたくさん使う筋線維ほど一つの核が制御する領域が大きいことが分かりました。制御領域の大きさを決める因子としては、拡大方向にMfn1もしくはMfn2が関与しており、縮小へはMffが関与していることが分かりました。
感想:
筋線維タイプ、運動、エネルギー基質について相関はみられたものの因果関係についての実験や言及については深追いされていませんでした。ミトコンドリアの制御領域がなぜ細胞質とは異なり制約されているのかについても更なる実験が必要と思われます。ですが、主に収縮様式に関連する指標によって分類される筋線維タイプを代謝に関連のあるミトコンドリアとの関連性で追っていったところはとても面白いものでした。また、単一核の制御領域についても、そもそも多核細胞がどうやって細胞内のイベントを制御しているのか考える際にとても有意義な情報が示されたと感じました。
by Fujii-group
| 2016-12-20 21:13
| ラボミーティングの内容
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