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JCまとめ(K宮)

Peroxiredoxin 3 has a crucial role in the contractile function of skeletal muscle by regulating mitochondrial homeostasis
Free Radical Biology and Medicine 77(2014) 298-306
Lee KP, Shin YJ, Cho SC, Lee SM, Bahn YJ, Kim JY, Kwon ES, Jeong DY, Park SC, Rhee SG, Woo HA, Kwon KS.

H(2)O(2)を含む活性酸素種(ROS)の異常な増加は、骨格筋に様々な影響を与えるとされています。ROSは筋体積の減少や筋分化の抑制の要因であるほか、筋ジストロフィー等の筋疾患への関与が示唆されています。本研究では、Peroxiredoxin 3の全身性ホモ欠失マウスを用いて、ミトコンドリア内のROSの増加が骨格筋に与える影響を調べています。
Peroxiredoxin 3(Prx3)は、抗酸化タンパク質であるPeroxiredoxinのアイソフォームの1つです。Prx3はミトコンドリアやサイトゾルに存在しており、主な働きはミトコンドリア内のH(2)O(2)の約90%を処理するとされる還元機能です。筆者らは、Prx3-KOマウスではこの機能が失われ、ミトコンドリア内のROSが増加することにより、骨格筋に何らかの影響が見られることを期待していました。Prx3-KOマウスを用いた先行研究では、ROSの増加が脂肪細胞の分化に影響を与えることを報告しています。
まず筆者らは、このマウスから単離した初代培養細胞において、分化誘導後にPrx3の発現量が上昇する点に着目しました。つまり、Prx3が骨格筋の分化に影響を何らかの影響を与えると考えました。Fig.1では分化前後の細胞形態・分化マーカーをWTとKOで比較していますが、Supplemetary Dataを含め、分化には特に差は見られませんでした。
次に筆者らは、Prx3の主な作用場所であるミトコンドリアに着目しました。Fig.2ではミトコンドリア内のROSを定量し、予想通り、ROSがKOマウス由来の初代培養細胞でWTに対し有意に増加していることを示しました。一方で、ミトコンドリア内のH(2)O(2)の約90%を処理するという報告に対し、ROSの増加はWTの約1.5倍に留まりました。Fig.3では、初代培養細胞および摘出骨格筋でミトコンドリアの形態を観察しました。いずれにおいても、ミトコンドリア形態の異常が見られ、ROSの増加がミトコンドリアの恒常性に関与する可能性を示唆しました。またFig.6では、ミトコンドリアの膜電位がKOにおいてWTと異なることを示しました。 Fig.4ではミトコンドリアの機能に着目し、mtDNAおよびATP量の定量を行い、いずれもWTに対し有意に減少していることが分かりました。
これらの結果から、筆者らはミトコンドリアの融合・分離による恒常性が、ROSの増加で乱されていると考察しました。Fig.5では、ミトコンドリア融合・分離を制御するタンパク質の発現量を比較しました。その結果、KOでは融合のレギュレーターであるMitofusin1,2の発現量減少が見られ、先行研究と合致する結果を得ました。最後に、このようなミトコンドリアの恒常性不全・機能不全が、骨格筋の収縮機能に与える影響を評価しました。最大握力(Grip Strength Test)と強縮時の収縮力に差がなかった一方、収縮刺激の繰り返しによる疲労は、KOでより急速に進むことが分かりました。
以上から筆者らは、Prx3はROSの除去を介してMitofusin1,2の発現を安定化し、ミトコンドリアの融合・分離による恒常性を保つ重要分子であると結論付けています。しかしながら、Prx群を始めとする他の抗酸化タンパク質の作用を評価していないことや、それぞれの結果の繋がりに対する因果関係が示されないなど、この時点では課題を残した研究であったと考えられました。


by Fujii-group | 2016-10-31 12:02 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

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