「恐れてはいけないんだ」 藤井宣晴

新年早々、当番が回ってきた教授のブログです。ハロウィーンの仮装の謎がようやく解けました。
深い・・・・・

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昨年の日本細胞生物学会で面白い特別講演に出会った。Nature Cell Biologyなどを中心に活躍するDr. J. Victor Small(オーストリアInstitute of Molecular Biotechnology)の、「Navigating a way through the scientific jungle; a personal account」という講演。内容は、「科学者として生きるために必要なこと」「研究室(研究グループ)の運営の仕方」などについて。アメリカにいた頃は大学がこの類のセミナーを頻繁にひらいてくれたが、日本の大学はまずやらない。

若い研究者とその卵たちに発せられるDr. Smallのアドヴァイスは、きわどい具体性があり(必要な者・物、不必要な者・物がきちんと提示され)、希望に満ち(サイエンスへの敬意と信頼が備わり)、しかもウィット(日本では四葉のクローバー並みの存在)に富んでいた。詳細はいつか紹介したいが、その1つに「Don’t afraid to test your crazy ideas」があった。

科学誌Natureが1849-1953年に掲載した記事・論文をまとめ、さらに関連するトピックを盛り込んで出版したBeside Natureという本に、こんな写真が載ったページがある。
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Francis Galton (1822-1911) という多才な研究者が、実際に考案し特許まで得た換気装置つきのおかしな帽子。。。頭を冷やしてリフレッシュできる機能を備えた帽子だそうだ。Dr. Smallは講演の中でこれを紹介したうえで、「クレージーなアイディアの検証を恐れてはいけないんだ」と呟くと、自作の“Galton Hat”を傍らから突然取り出しかぶって見せた(これは講演終了時に彼が請われて写真撮影に応じている様子)。
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ウィットの効いた話がひとしきりした頃、「ところで、誰かこの帽子がほしい人はいるかい?」とたずねる。迷わず手を挙げると、「じゃあ、これは君のものだ」。こうしてDr. Smallのお手製Galton Hatは、わたしのオフィスに飾られることになった。
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この年のハロウィーンはGalton Hatの衣装に決めた。ところが、学会から戻って、Dr. Smallの講演メモに残したキーワードで検索するも、あの帽子にまつわる情報に行き当たることができない。じつは、Beside NatureもFrancis Galtonも後日に知ることとなるワード。情報を手繰り寄せることができずにいたのは、原典がNature誌にあると思い込んでいたからなのだが、講演メモと自身の記憶では事を打開するに至らなかった。

どうする?。
本人に直接たずねるか。

面識といえば、あの学会のあの瞬間でしかないDr. Smallに、メールを送った。「ハロウィーンのコスチュームという馬鹿馬鹿しいことのためにメールを送るのはcrazy ideaだと理解しています。けれども、その検証を恐れてはいけないことを、わたしはあなたの講演で学びました」

驚くほどすぐに、詳細を説明するメールが、添付資料つきで返ってきた。メールの最後には、「Good luck with your new lab. Vic.」とあった。

http://www.imba.oeaw.ac.at/research/vic-small/
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by Fujii-group | 2012-01-16 19:29 | メンバーの日記 | Comments(0)

分子生物学、運動生化学、生理学研究、の日々


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