<   2016年 06月 ( 4 )   > この月の画像一覧

JCまとめ(B4)

Mol Cell Biochem (2016) 411:173–180 DOI 10.1007/s11010-015-2579-8

A fragmented form of annexin A1 is secreted from C2C12 myotubes by electric pulse-induced contraction

Naoko Goto-Inoue1 • Kotaro Tamura2 • Fumika Motai2 • Miyuki Ito2 • Kaede Miyata2 • Yasuko Manabe2 • Nobuharu L. Fujii2


この論文では、骨格筋におけるANXA1の分泌と、細胞収縮によって誘導されるC2C12由来myotube中でのANXA1の機能について調査を行っています。また、断片型アネキシンA1が電気刺激による細胞収縮によってC2C12由来のmyotubeから分泌されることについて論じています。
ANXA1は細胞内で抗炎症作用、白血球輸送、エキソサイトーシス(食作用)、アポトーシス、細胞増殖、分化など、幅広い生物学的機能に関与していることが知られています。また、骨格筋中では骨格筋中では膜修復システム、myoblastからmyotubeへの分化、細胞遊走に関与していると考えられています。これらの生物学的機能の中で、ANXA1は主に3つの経路、ABC transporter(ATP-binding cassette transporter)を介した経路、ANXA1のリン酸化により細胞膜を通過する経路、エキソソームを介した経路、によって分泌されていることが分かっています。この分泌経路の途中で、ANXA1は細胞外プロテアーゼによって断片へと切断され、分泌することが報告されています。しかし、ANXA1断片化の詳細なメカニズムや生理学的重要性は、これまで分かっていませんでした。

筆者らの実験により、C2C12の myotube からANXA1は分泌され、分泌されているANXA1は断片化していることが分かりました。また、カルパイン処理したANXA1は、Ac2-26ペプチドと同等のものに分裂することが分かりました。
このカルパインは細胞収縮によって活性化することが報告されています。そこでC2C12のmyotubeを電気刺激によって筋収縮を再現した実験を行いました。その結果、C2C12由来のmyotubeは、細胞収縮によってカルパインが活性化することが分かりました。
さらに、完全長および断片型ANXA1の分泌量が収縮により変化するか検討したところ、カルパイン阻害剤の有無に関わらず、収縮による変化は見られませんでした。また、完全長および断片型ANXA1が、エキソソームを介して骨格筋から分泌されるか検証した結果、完全長ANXA1はエキソソームを介して分泌されていることが分かりました。一方で、断片型ANXA1は主に上清(非エキソソーム画分)に存在しており、完全長と断片型で分泌機序が異なることを示唆しました。
また、wound-healing assay (in vitro scratch assay)を用いて、完全長ANXA1およびAc2-26(N末端断片のmimic)の存在下における、C2C12細胞の損傷に対する遊走を評価しました。その結果、Ac2-26は完全長ANXA1よりも高い創傷治癒効果をもたらすことが分かりました。よってANXA1の断片化には、創傷治癒効果を亢進させるという生理学的な意義が明らかになりました。

以上よりこの論文では、ANXA1の断片化はカルパインにより引き起こされ、その分泌量は収縮により増加することを明らかにしました。また断片化により生じるN末端断片は、完全長ANXA1より強力な創傷治癒効果を有することを示しました。これらのことから、断片型ANXA1は、収縮時に分泌量の増加するマイオカインであると結論付けています。
一方で、(1)断片化の基質となる完全長ANXA1はどうように細胞外に供給されるのか、(2)断片化は細胞外のどこで起きるのか(細胞膜上か否か)、(3)N末端断片はどのように遊走させる細胞にアクセスするのか、などの課題も残しています。


[PR]
by Fujii-group | 2016-06-23 18:40 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

人工筋線維(古市JC)

Nat Biotechnol. 2016 May 30.
An artificial niche preserves the quiescence of muscle stem cells and enhances their therapeutic efficacy.
Quarta M, Brett JO, DiMarco R, De Morree A, Boutet SC, Chacon R, Gibbons MC, Garcia VA, Su J, Shrager JB, Heilshorn S, Rando TA.
 
 今回は骨格筋の細胞治療の話です。筋ジストロフィー症などの難治性骨格筋症の治療方法として、患者さんのサテライト細胞をin vitroで遺伝子治療した上で患者さんに移植する方法が開発されています。しかし、サテライト細胞はin vitroで2D培養されると活性化(細胞周期に突入)してしまい、移植されても生着しないという問題がありました。著者たちは、それは生体外ではサテライト細胞のニッチがないためである、言い換えれば、培養皿で生体のニッチを構築できればサテライト細胞を休止状態に維持できると考えました。
 まず、休止状態の保持に効果があるとされる化合物10個を選出しました。それらを様々な組み合わせと濃度で培養液を調製して培養し、QMuSCs(休止サテライト細胞)に遺伝子発現パターンが近いものを主成分分析によって同定しました(この培地をQMと名付ける)。実際にQMで培養すると、サテライト細胞の活性化が阻害されました。さらに、CollagenにIntegrinα4β1とラミニンでコートした人工ファイバー(EMF)を作製し、その上でサテライト細胞を培養したところ、より休止性が維持されました。
 このような条件で培養した細胞はマウス骨格筋への移植効率が高いことが示されました。生着しただけでなく、Hostマウス内で休止状態に戻ることも分かりました。また、レンチウィルスで遺伝子導入してもEMF培養が有効であること、ヒト細胞を同様な結果が得られることが確認されています。
 細胞治療を臨床応用する日は決して近くないかもしれませんが、本論文のようにニッチを生体外の構築する試みはその実現への新たな一歩であったように思います。


[PR]
by Fujii-group | 2016-06-21 19:02 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

京都訪問

こんにちは。M1のT橋です。
5月19日~21日で糖尿病学会が京都で行われました。私たちM1は学会に参加はしなかったのですが、学会に参加していた藤井教授の元同僚の先生(Jørgen F. P. Wojtaszewski先生)に京都を案内する(ちなみにM1で京都出身の人は誰もいません)ということで、5月21日~22日で京都に行ってきました。

 1日目はWojtaszewski先生と京都大学の林先生の研究室(運動医科学研究室)の方々と京都大学で勉強会を行いました。勉強会は、まずWojtaszewski先生の講演を聞き、そのあとに学生がそれぞれ自分の研究について発表するという形でした。Wojtaszewski先生の講演は、英語が不慣れな私たちでも分かりやすいようにと丁寧に説明をしてくださったおかげで大部分は理解でき、とても勉強になりました。自分たちの発表は、英語で自分の研究について話すことの難しさ、自分の研究不足を痛感し、課題が多く残る結果になりました。夕飯は林先生にカレーをごちそうになりました。バリエーション豊かでおいしかったです。ありがとうございました。

 2日目はWojtaszewski先生、京大の方々とともに嵐山観光をしました。午前中は、渡月橋を通って世界遺産である天龍寺に行きました。天龍寺の中の庭園は趣があり、Wojtaszewski先生に日本の文化を伝えつつ、景色を楽しみながら散歩をしました。午後はWakamurasakiというお店で着物体験をしました。Wakamurasaki では1000円で各々の好きな着物を着て外で記念撮影ができます。私たちも各々の好きな着物を選んで店員さんに着つけてもらいました。Wojtaszewski先生は初めての着物とのことだったのですが、とてもお似合いでした。

記念撮影をした後は、M田くんがM鍋先生に刀(偽物)を向けられてとても嬉しそうでした。

その後は、甘春堂というお店で和菓子体験をしました。和菓子は季節に合わせて上生菓子を3つ、干菓子を1つ作ることができます。同じように教えてもらったはずなのに、作る人によって個性が出て、とてもおもしろかったです。作った和菓子をその場で抹茶と一緒にいただいたのですが、想像を超えるおいしさでした。


 全体を通してとても充実した2日間だったと思います。自分を見直す良い機会にもなりました。Wojtaszewski先生、京大の方々、F井先生、M鍋先生、F市先生、ありがとうございました。


[PR]
by Fujii-group | 2016-06-11 13:39 | メンバーの日記 | Comments(0)

JCまとめ(T橋)

Cell Reports 11, 1220-1235 (2015)

Differential Role of Insulin/IGF-1 Receptor Signaling in Muscle Growth and Glucose Homeostasis

Brian O’Neill, Hans P.M.M, Laurie J.Goodyear, C.Ronald Kahn

 この論文では、インスリン受容体(IR)とIGF-1受容体(IGF1R)を骨格筋特異的にノックアウトしたマウス(MIGIRKOマウス)の表現型の解析を行っています。先行研究では、IRのみをノックアウトさせたマウスではインスリンシグナルが働かないのにも関わらず、糖尿病を発症しませんでした。また、IGF1Rのみをノックアウトさせたマウスでは筋成長をほとんど抑制しませんでした。これらの結果を踏まえ、著者らはIRとIGF1Rは、互いに補い合って作用しているという仮説を立てました。そこで本論文ではインスリンシグナルとIGF-1シグナルが糖代謝やタンパク質合成をどのようにコントロールしているのか明らかにする目的で実験が行われています。

 MIGIRKOマウスでは、野生型と比べて著しい筋委縮が見られました。しかし耐糖能やインスリンに対する応答は正常であったことから、IRとIGF1Rのどちらかは筋成長に必要だが正常な耐糖能を維持するには必要ないことが示唆されました。そこで骨格筋の糖取り込みを測定すると、Basalの糖取り込みが上昇していることが分かりました。インスリンシグナルに関連するタンパク質の発現量を見ると、IRSやAktが上昇しており、BasalでのAktのリン酸化や下流のシグナルも活性化していました。このことから、IRとIGF1Rが存在しないと別のチロシンキナーゼが働いてIRS-PI3K-Aktシグナルを活性化していることが示唆されました。

 次にMIGIRKOマウスでBasalの糖取り込みが上昇する要因を探るために、TBC1D1/AS160やグルコーストランスポーターの発現量を測定しました。結果、TBC1D1の発現量が低下していることが分かりました。また、グルコーストランスポーターであるGlut1やGlut4の発現量は上昇しており、Glut4の膜局在も上昇していました。MIGIRKOマウスのファイバーで一時的にTBC1D1をトランスフェクションすると異常なGlut4の膜局在が抑えられました。このことからIRとIGF1RはTBC1D1の発現を調節し、Basalのグルコーストランスポートを調節している可能性が示されました。

 これまでの結果より、全身の代謝がインスリンシグナルなしで適応していることが示唆されたため、MIGIRKOマウスの代謝測定を行いました。結果、MIGIRKOマウスではエネルギー消費量が上昇しており、それが白色脂肪組織の褐色化と脂肪組織での糖取り込みが上昇していることによるものだと分かりました。しかし、MIGIRKOマウスに高脂肪食を与えても糖尿病にかかりにくくなるという訳ではありませんでした。

最後に、MIGIRKOマウスにドミナントネガティブ(DN)IGF1Rを発現させたマウス(MKR-MIGIRKO)を用いて表現型解析を行いました。先行研究ではDN-IGF1Rを過剰発現させると、耐糖能不全を引き起こし、糖尿病を発症するという結果が出ています。この結果を受けて、正常なIRやIGF1Rが存在しない中でDN-IGF1Rはどのように機能するのか明らかにする目的で行われました。その結果、MIGIRKOマウスでは耐糖能に異常はなかったが、MKR-MIGIRKOマウスでは耐糖能の低下が見られました。しかし、IRS、Aktなどのタンパク質発現量はMIGIRKOマウスと同じ傾向であったことから、DN-IGF1RはIRとIGF1R以外の別の受容体(Metなど)と結合している可能性やIRS-1やShcなど下流のシグナルタンパク質と結合している可能性が示されました。以上の結果より、著者らはIRとIGF1Rの相互作用についてさらに調べていく必要があると述べ、まとめています。


[PR]
by Fujii-group | 2016-06-07 13:11 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

分子生物学、運動生化学、生理学研究、の日々


by Fujii-group
プロフィールを見る
画像一覧