それは一人の不審な男性によって巻き起こされました。
ある火曜日の生体機能調節学という授業。今年から開講された授業に、M鍋先生はいつも通り歯切れの良い口調で講義を展開していました。朝一番の授業ということもあり、履修する学生は皆真剣そのもの。熱心にM鍋先生の話に耳を傾け、ノートにメモをとっています。
この日、唯一いつもと違ったのは、最後列の端に、メガネにマスク、フードを被ったままの男性がノートも開かず、終始うつむき加減で講義を受けていたということ。決して寝ている訳ではないようですが、突然不敵な笑みを浮かべたと思えば、机の下では小さなガッツポーズ。時折、携帯で自撮りする振る舞いは不審者そのもの。よく見ると、フードからは茶色の長髪がはみ出しています。

後に自ら告白して判明したのですが、これはF教授でした。
M鍋先生の授業の様子がどうしても気になり(親心)、変装して学生に紛れ込んでいたようです。ガッツポーズは、F教授が苦手な九九の計算を、なんとM鍋先生が間違えてしまったためでした。(前のミーティングで、九九が苦手なF教授は皆にからかわれていたのでした。)
M鍋先生はその不審な男性の存在を覚えていたものの、それがまさかF教授だとは気づかなかったようです。また、M鍋先生が九九を間違えることは絶対に無く、そのときのミスは何か見えない大きな力が働いたみたいです。

さて、この「授業に忍び込む」という行為、それから研究室メンバーにも飛び火します。M鍋先生や僕(F市)は、メガネとマスクを装着し、F教授の授業を参観しに行きました。M2の3名は、変装もしないで堂々とF教授の授業に乗り込んだようです。

そして、今週にあった僕の講義デビュー戦。
M鍋先生とM2の3名は、開始時刻にしっかりと最前列に着席していました。そして少し遅れて、マスクにメガネ、かわいいニット帽を被った男性が一人。後ろのドアから静かに入室したものの、後方には既に席が空いていなかったため、教室全体の注目を浴びながら一番前に座って下さいました。とてもとても怪しい姿でしたが、スクリーンのズレを直してくれたり、僕の声が届いていない学生に教えてくれたり、授業を助けてくれました。

僕もこのブームに乗って先生方の授業を参観し、大変勉強になりました。90分 という長い時間、学生の興味を持たせながら説明を続けるには、いくつもの工夫が必要です。つかみのジョーク、話題転換のためのネタ、興味を引かせるトピックス、分かりやすい例え。F教授とM鍋先生は、特別なテキストを使わず、オリジナルのストーリーを創って話されていて、参考になりました。

ということで、忘れた頃にまた忍び込みたいと思います。
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by Fujii-group | 2014-12-21 09:30 | メンバーの日記 | Comments(0)

最近の当ラボのミーティングは雑談から始まります。そこで話題になり、F教授が興味を示されると、その内容に関してブログの執筆を命ぜられます。今回は、(修論で忙しい) T村が担当させて頂きました。

筋肉には、瞬発力を発揮する速筋線維と持久力を発揮する遅筋線維があります。
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ヒトを含む哺乳類の場合には、ひとつの筋のうちで速筋線維と遅筋繊維が混在しているのですが、魚類の場合には速筋と遅筋の分布が明確に異なることが知られています。そう、赤身か白身かという話です。赤身は遅筋、白身は速筋に相当します。遅筋が赤く見えるのは、ミオグロビンという酸素を貯蔵するタンパク質が豊富に含まれているからです。

持久的に運動するためには、ミトコンドリアの酸化的リン酸化を介した持続的なATPの供給が必要となります。その反応に酸素を必要とするため、遅筋には酸素を蓄えておくミオグロビンが多いです。一方で速筋は、筋肉に蓄えられたグリコーゲンをピルビン酸に分解する解糖系を介してATPを供給します。この反応には酸素を必要としないため、速筋にはミオグロビンが少ないです。ミオグロビンは、2価の鉄イオンを配位したポルフィリン錯体のヘムを中心に持ち、このヘムが酸素と直接結合します。ポルフィリンは鉄イオンを配位することで平面構造が歪み、吸収スペクトルが短波長側へシフトし、青色光を吸収するようになります。従って、ヘムに当たった光のうち短波長の青色光は吸収され、長波長の赤色光のみが反射されます。目に入ってきた赤色光は、網膜の視細胞である錐体に発現するオプシンと結合したレチナールの光異性化を誘導し、オプシンの立体構造の変化を介して下流のGタンパク・・・(以下略)・・・ミオグロビンが「赤く」見えます。

話を戻して・・・実は、白身のお魚にも遅筋があります。それが血合い (血合筋) です。一方で白身の部分は普通筋と呼ばれており、魚の種類によって血合筋の割合は異なります。
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通常の遊泳の際には血合筋が活動しており、エサを補食したり、敵から逃げる際の瞬間的な動作に普通筋が活動します。従って、専ら海底に身を潜めているヒラメなどは普通筋が多く、遠洋を回遊するマグロなどは血合筋が発達しています。
筋形成の初期の段階で、この血合筋を構成する遅筋の筋細胞が魚の深部から表層へと移動してくることが近年の研究から明らかになったそうです。いったいどのような発生のメカニズムなのか、哺乳類の筋形成とはどう異なるのか非常に興味深いと思いました。
ちなみにサケは白身 (普通筋) です。赤色に見えるのはアスタキサンチンという色素成分のせいです。アスタキサンチンは藻類に含まれており、食物連鎖によりサケに濃縮されます。エビやカニが赤いのと同じ理由です。
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by Fujii-group | 2014-12-18 19:27 | メンバーの日記 | Comments(0)

日本人が英語を話すときに意外と苦労するのが、「ノー」と「イエス」の使い分け。日常会話の、文法的にゆるい表現の際に苦労する。自分では肯定しているつもりが否定していて、それに気づかないことも多い。

例えば、レッドソックスの試合を観に行くつもりだったのに、実験が終わらなくて行けなかった場合、次の日に同僚がこう声をかけてくるかもしれない

「そういえば、昨夜は野球を観に行かなかったんだって?」
(Say, you didn’t go to the game last night?)

これには、「うん、行かなかったんだ」と答えたい。日本語の「うん」は、英語では通常「イエス」。しかし、この質問にイエスで答えてしまうと、「いや、ぼくは観に行ったよ」。の意味になる。

日本語では話しかけてきた相手に対して同意するかしないかで肯定(はい・イエス)と否定(いいえ・ノー)を使い分ける場合が多いのに対して、英語では話の内容に同意するどうかで使い分ける。だから、相手の問いかけに否定の単語「not」などが入っている際は要注意。ノーとイエスの意味が、日本人にとっては逆転してしまうことがある。と、頭で分かっていても実践は難しく、ときにはトラブルも生じる。

ボストン時代。夕方に、次の日に行う実験の準備をしていたら、その実験を一緒に行う予定の同僚(マーニー)が部屋に入ってきた。

マーニー「一人で準備していたの?手伝うわ」
ノブ  「たいした作業じゃないから独りでやれるよ」
マーニー「。。。わたしに触らせたくないの?(So, you don’t want me to touch the samples?)」
ノブ  (その通りだ、と言ってることに気づかず)「ノー、君の手を煩わせるほどでもないから」
マーニー「わたしは実験が下手だって思ってるのね(I’m not a good experimenter?)
ノブ  (違う、違う、と言ってるつもりで)「はい、はい、そう思ってますよ!(No, no. I don’t think so! )」
マーニー「分かったわ(と言い残し、プリプリと実験室を出て行く)」
ノブ  (何かおかしいと思いながらも、出て行くマーニーの背に向けて)「そうなんだよ!おまえは実験が下手なんだ!!(No!, No!!, No!!!)」

「そうじゃないんだ」という気持ちを伝えたいがゆえにノーを連呼した結果の実話である。けど本当のところは、マーニーがわたしの英語の下手さ加減を熟知していて、それをからかったパフォーマンスだった。呆然と立ちつくすわたしを見て、実験室に居合わせたラボメンバーは大爆笑なのであった。

日本に戻っても、ノーとイエスに戸惑うことがある。ラボのスタッフや学生が、わたしにノーを突きつけることがあるのだ。そんなときは、「ああ、英語で思考できるようになったんだな」と思うことにしている。
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by Fujii-group | 2014-12-12 19:29 | 研究以外の日々 | Comments(0)

副専攻の発表会

先日、人間健康科学専攻副専攻の発表会が実施されました。

私たちのラボでは、理学部 生命コース3年のA木さんが副専攻の研究を終えて、発表に望みました。初めてのポスター作りは大変な苦労だったようですが、先輩のバックアップとA木さんの最後の追い込みにより、立派に、そしてきれいに仕上がり、無事発表を終えました。
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部活や他の活動も積極的に行いながらも、きちんと副専攻の発表も無事終える事ができたのは、本当にすばらしいことです。お疲れ様でした。
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by Fujii-group | 2014-12-10 08:28 | 研究に関連する話 | Comments(0)

分子生物学、運動生化学、生理学研究、の日々
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