カテゴリ:ラボミーティングの内容( 58 )

JCのまとめ:古市

Science. 2016 Jul 8;353(6295)
Asymmetric division of clonal muscle stem cells coordinates muscle regeneration in vivo.
Gurevich DB, Nguyen PD, Siegel AL, Ehrlich OV, Sonntag C, Phan JM, Berger S, Ratnayake D, Hersey L, Berger J, Verkade H, Hall TE, Currie PD.

「骨格筋が損傷すると、サテライト細胞が増殖、融合して傷ついた筋線維を修復する。」
 僕も授業や講演で必ず口にする台詞ですが、これは本当でしょうか。筋の再生に対するサテライト細胞の振る舞いは、in vitroの実験結果をもとに推測されたものです。つまり、これまでは誰もin vivo(生体内)でサテライト細胞が筋線維を修復する様子を観察したことが無いので、それが本当だとは断言できませんでした。
 生きている骨格筋でサテライト細胞が再生する様子を捉えたのが今回の論文です。このグループは、ゼブラフィッシュ(身体が透明で、遺伝子改変による標識が簡単)の筋肉に針やレーザーを当て、筋の再生をイメージングすることに成功しました。
 フィッシュにもサテライト細胞は存在するようで、Myf5(休止、活性、増殖期に発現)の制御領域にGFPを挿入したTgフィッシュを使い、再生過程を観察しました。サテライト細胞は分裂しながら損傷部位を遊走し、双極伸展した後に融合(分化)していきました。面白いことに、筋芽細胞が分化する前には近傍の筋線維からfilopodia(糸状仮足)が伸びて遊走している細胞を捕まえるそうです。
 哺乳類では転写因子Pax7が休止状態のサテライト細胞のマーカーとして使用されますが、フィッシュではcMet(受容体型チロシンキナーゼ)が休止期サテライト細胞のマーカーであることが示されました。cMet(mCherry)とMyf5(GFP)のダブルTgフィッシュを使って、サテライト細胞が非対称性分裂(細胞分裂した際、一方は筋発生、もう一方は自己複製する)することが証明されました。cMet陽性細胞を特異的に削除するシステム(cMetのプロモーターでKalta4が発現し、それがUAS配列に結合することでnfsBが発現する。nfsBはMetronidazoleを活性化(毒化)するので、その細胞は死んでしまう。)を使って、サテライト細胞が無くなると筋再生が悪くなることも示されています。
 最後に、Zebrabowという蛍光標識によって隣り合う細胞の由来が同一(クローン)かどうかを調べる手法で、再生した筋線維のClonalityを検証しました。これはCreがランダムにlox配列を切る性質を利用し、GFP、CFP、RFPのどれかが発現して、さらにそれが3コピーあるので細胞が10種類の色をランダムに発色するというシステムです。その結果、再生部位はRainbowにならず単一色となったため、フィッシュではたった1つのサテライト細胞で複数の筋線維を構築していたことが示されました。
 この論文がPublishされる数ヶ月前にマウスのTAで筋再生をイメージングした論文(Webster et al., 2016, Cell Stem Cell)が発表されましたが、詳細な機序を示している分、本論文の方が読み応えがありました。ただし、フィッシュは筋線維あたりのサテライト細胞数が少ないなど種間の相違があり、この現象が哺乳類でも生じているかはまだ分かりません。


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by Fujii-group | 2017-05-13 12:31 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(井上)

Cell. Mol. Life Sci.  DOI 10.1007/s00018-016-2445-1
Received: 26 August 2016/Revised: 2 December 2016/Accepted: 19 December
Retinoic acid maintains human skeletal muscle progenitor cells in an immature state
M El Haddad et al.

この論文は、ヒト筋前駆細胞にレチノイン酸(RA)を添加すると分化が起こらず、未熟状態を保つという内容です。RAシグナル伝達経路の活性化が筋芽細胞の分化および分化転換を防ぎ、未成熟細胞特有遺伝子の発現を増進することが示されています。

初代ヒト筋芽細胞を用いて、培地にRAを添加して分化させたところ、10-6MのRAで細胞の分化が完全に阻害されることがわかりました。また、RAをウォッシュすると筋芽細胞が分化に進むことから、RAによる分化阻害は可逆的です。

ヒト筋芽細胞にレチノイン酸レセプター(RAR)とレチノイドXレセプター(RXR)のアンタゴニストを添加して分化誘導したところ、RARアンタゴニストを加えたものでは、RA添加による分化阻害と同等の結果が得られました。この結果から、RAがRAR活性化を介して筋芽細胞分化を阻害しているのではないか、と筆者らは考えています。
また、ヒト筋芽細胞にRARインバースアゴニストであるBMS493を添加したところ、分化の促進が見られました。さらに、siRNAを用いて、RARの3つのアイソフォームであるRARα、RARβ、RARγをノックダウンさせたところ、RARβとRARγをノックダウンさせた筋芽細胞で分化の促進が見られました。これらの結果から、RARはヒト筋芽細胞の分化を負に調節していると考えられます。

ヒト筋芽細胞にRAを添加すると、MYOD遺伝子ファミリーの発現を阻害しますが、PAX7およびPAX3の発現を維持させます。休止期と活性期のマウスサテライト細胞の発現遺伝子を比較したところ、Pax3・Pax7、またRA生合成に関与する全ての遺伝子の発現レベルは、休止期で有意に高くなりました。これらの結果は、RAシグナリングが休止期のサテライト細胞でより活性化していることを示しています。
ヒト筋芽細胞において、siRNAを用いてMYODをノックダウンし、筋原性遺伝子の発現を解析しました。ノックダウンした細胞ではMyf5、PAX7、PAX3のmRNAが大幅に増加したのに対し、MyoDの非常に強力な減少を示しました。これらの結果は、MYODの不活性化がヒト筋芽細胞を、より未成熟にすることを示します。

結論として筆者らは、RAはヒト筋芽細胞の分化を阻害し、未熟期を保つことを示唆しました。そして筆者らは、RAによる分化の阻害は、RAがMYODファミリー遺伝子の発現を阻害した結果であると考えているようです。また、筋肉細胞におけるRARβとRARγが、RARαとは異なる生物学的機能を有することが示唆されています。
全体としてこれらの結果は、筋芽細胞にRAを添加して培養することで、筋芽細胞を移植した際に、移植細胞のコロニー形成率を増加させる可能性があることを示唆しています。


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by Fujii-group | 2017-03-02 18:15 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(T橋)

2017, Nature Communications 8, 14328
Pten is necessary for the quiescence and maintenance of adult muscle stem cells
Feng Yue, Pengpeng Bi, Chao Wang, et al.

 今回の論文はPtenがサテライト細胞の休止状態の維持に必要であるという内容です。サテライト細胞は骨格筋の組織幹細胞であり、骨格筋の再生で中心的な役割を果たします。サテライト細胞による骨格筋の再生は内的・外的な様々な因子によって制御されていることが知られています。先行研究では、Ptenが神経幹細胞や造血幹細胞の自己複製や分化を制御することが示されました。そこで著者らは骨格筋の再生を制御する新たな因子の候補としてPtenに着目しました。PtenはインスリンシグナルにおいてPIP3を脱リン酸化する酵素でありAktのリン酸化を負に制御します。

 サテライト細胞でのPtenの発現を調べたところ、休止期または活性化したサテライト細胞にのみ発現していることが分かりました。骨格筋再生におけるPtenの機能を明らかにするために、著者らはサテライト細胞特異的にPtenをKOしたマウスを作製し表現型解析を行いました。結果、PtenKOマウスでは休止期サテライト細胞数が減少しており骨格筋の再生能力が低下していることが明らかとなりました。これは、PtenをKOしたことによってサテライト細胞が休止性を失い分化に進行したためです。

 続いて著者らはPtenによる休止期サテライト細胞数の減少がどのようなメカニズムを起こっているのか調べました。PtenをKOするとAktのリン酸化が上昇することから、著者らはまずAkt-mTORシグナルに着目しました。PtenKOマウスではAkt-mTORシグナルが活性化していましたが、mTORの活性を阻害してもPtenKOによるサテライト細胞の減少はレスキューされませんでした。このことから、Akt-mTORシグナルはサテライト細胞数の減少に関与していないことが分かりました。

 次に著者らはAkt-FOXO1-Notchシグナルに着目しました。PtenをKOするとFOXO1の細胞質移行が促進されており、Notchの標的遺伝子の転写が抑制されていることが分かりました。さらにFOXO1はNotch受容体の細胞内ドメイン(NICD)と結合するタンパク質であるRBPJkと結合し、Notchの標的遺伝子の転写を制御していることが分かりました。そこでNotchの活性をレスキューすると、PtenKOによるサテライト細胞の減少が抑えられ、休止期サテライト細胞の数が野生型と同じレベルまでレスキューされました。しかし、骨格筋の再生能力はレスキューされませんでした。これはNotchシグナルを活性化したことによって自己複製が促進され分化が阻害されたためだと考えられます。最後に著者らはPtenとNotchシグナルの間には様々なシグナル経路のクロストークが存在し、骨格筋の再生を制御するとまとめています。


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by Fujii-group | 2017-02-15 11:01 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(川端)

Diabetes. 2016 Jan;65(1):188-200.
Obesity impairs skeletal muscle regeneration via inhibition of AMP-activated protein kinase.
Xing Fu, Meijun Zhu, Shuming Zhang, Marc Foretz, Benoit Viollet, Min Du


 今回紹介した論文は、肥満によるAMPK活性の低下と骨格筋再生に関する内容です。肥満・2型糖尿病といった代謝性疾患は世界中で重大な健康問題となっており、筋再生の低下やAMPK活性の低下と関与しています。しかし肥満・2型糖尿病の筋再生の低下におけるAMPKの役割は未だ明らかではありません。

 筆者らのグループはAMPKと筋形成についての先行研究を既に行っており、AMPKα1 KOマウスにおいて筋管形成とMyogenin発現が低下していることを明らかにしています。これらの知見から、AMPKα1が骨格筋の再生を促進し、肥満がAMPKα1の活性を阻害することで骨格筋再生を妨げると筆者らは仮定しました。

 著者らは、通常マウスと肥満マウスの骨格筋をCTXで損傷させ、筋再生を誘導した後にそれらを摘出しました。それらのAMPKα1活性、筋再生およびサテライト細胞数を比較したところ、全て肥満マウスで低下していることが明らかになりました。
 肥満マウスにおける筋再生・サテライト細胞数の低下は、AMPKα1活性の低下に起因するものであると考えられました。実際に、AMPKα1 KOマウスを用いて同様の実験を行ったところ、肥満マウスと同様に、筋再生およびサテライト細胞数の減少が見られました。
 また、肥満マウスにAICAR(AMPK活性剤)を投与し、AMPK活性をレスキューすることで、筋再生とサテライト細胞数を回復させることに成功しました。しかし、サテライト細胞特異的AMPKα1 KO肥満マウスにAICAR投与しても、筋再生の回復が見られませんでした。このことから、筋再生において、サテライト細胞におけるAMPKα1の活性化が重要であることが示されました。

 したがって、AMPKは骨格筋再生に関与していると考えられ、肥満・2型糖尿病患者の骨格筋再生を改善するための治療標的となります。


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by Fujii-group | 2017-02-04 11:33 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(M田)

Mitochondrial Dynamics Is a Distinguishing Feature of Skeletal Muscle Fiber Types and Regulates Organellar Compartmentalization
著者:Prashant Mishra, Grigor Varuzhanyan, Anh H. Pham, David C. Chan
2015, Cell Metabolism 22, 1033–1044

要約:
今回の論文は筋線維タイプ、運動およびエネルギー基質の違いによって骨格筋内のミトコンドリアの形態がどんな変化を引き起こすか追った論文です。ミトコンドリアにおいておこるエネルギー生産反応である酸化的リン酸化経路(OXPHOS)をより使う筋線維や状況にあるほどミトコンドリアの融合がおきるというものです。また、この融合に関してMitofusin 1 (Mfn1), Mitofusin 2 (Mfn2)のどちらかが必要であることが示されています。
加えて、一つの細胞内(筋線維内)に複数の核を保持している骨格筋細胞において、一つの核がどの範囲までのミトコンドリアを制御しているのかについて、サテライト細胞を用いて示されています。結果、細胞質中に存在するタンパク質は筋線維全体にわたって拡散し、ミトコンドリアに向かうタンパク質は、発現された核の近傍において筋線維内にパッチ状にとどまることが示されました。また、この支配領域に関してもミトコンドリアの融合に関連するMfn1, Mfn2および分裂に関連するMitochondrial Fission Factor (Mff)が関連していることが示されました。

結果:
全体を通して、ミトコンドリアの形態観察はミトコンドリアへ移行する蛍光タンパク質(Mito-Dendra2)を持った遺伝子組み換えマウスを用いています。
Fig.1,2では筋線維タイプ別にミトコンドリアの形態が異なることが示されています。エネルギー産生過程においてOXPHOSによる反応に依存しているとされるType IおよびType IIAではミトコンドリアの融合が数多く観察され、このタイプに分類される筋線維は筋線維上のどこかで必ず融合した伸長型のミトコンドリアを持っていることが分かりました。一方、OXPHOSに依存しない筋線維タイプであるTypeIIxおよびType IIBでは観察した筋線維内のうち90%は伸長型のミトコンドリアを持っておらず、断片型のミトコンドリアのみ筋線維内に保持していました。Fig.3ではこの融合がどんな分子の関与によって生じているのか調べました。著者らは先行研究における知見からミトコンドリアの融合に関連するタンパク質であるMfn1, Mfn2に注目しました。野生型マウス、Mfn1のみノックアウトマウス、Mfn2のみノックアウトマウスおよびMfn1とMfn2のダブルノックアウトマウス(WKOマウス)を用いて、ミトコンドリアの形態観察を行ったところ、WKOマウスのみにて伸長型のミトコンドリアがなくなることが確認されました。この結果から伸長型のミトコンドリア生成にはMfn1もしくはMfn2の少なくとも一つが必要であることが明らかとなりました。
Fig.4では運動とエネルギー基質によるミトコンドリアの形態への影響を観察しています。運動による影響については蛍光タンパク質によって筋線維タイプ別に色分けができるマウスを用いて、4週間自主的運動をさせました。その結果、運動群ではType IIxもしくはType IIBからType IIAへのタイプ移行が足底筋において生じました。蛍光タンパク質による色分けによりType IIAである筋線維においては、必ず伸長型のミトコンドリアが含まれていることが明らかとなりました。続いて、エネルギー基質による影響を観察しました。長趾伸筋を取り出し培養皿において、OXPHOSを使用しなくてはエネルギーが生成できない基質(アセト酢酸)にて一晩培養を行ったところ、Type IIxとType IIBにおいても断片型が消失し、伸長型のミトコンドリアが観察されました。
Fig.5では多核細胞である筋線維において、筋線維内にある一つの核がどのくらいの範囲を制御しているのかについて調べました。タモキシフェン誘導により骨格筋の組織幹細胞であるサテライト細胞特異的にMito-Dendra2を発現するマウスをタモキシフェン誘導なしに使用しました。これは、一定の確率でタモキシフェン誘導なしでもシステムが作動してしまうというシステムの「漏れ」を逆手に利用した方法です。これにより、漏れのおきたサテライト細胞由来の核が筋線維に供給されることで、多核細胞である筋線維において一つ一つの核がどの領域までのミトコンドリアを制御しているのか蛍光観察によって調べることが可能となります。また今回は、Mito-Dendra2と同時に細胞質に向かうタンパク質として黄色い蛍光タンパク質(YFP)をこのシステムに組み込み、筋線維内における蛍光を観察しました。その結果、細胞質中のタンパク質(YFP)は筋線維全体に拡散していることが確認された一方、ミトコンドリアに向かうタンパク質(Mito-Dendra2)は、核の近傍にのみ局在し、特定の領域があることが示されました。さらに、このミトコンドリアの制御領域はType IIAにおいてType IIxやType IIBに比べて大きいことが明らかとなりました(Type Iは今回見ていなかった)。Fig.6ではFig.5で観察された制御領域の大きさがどんな分子によってコントロールされているのかについて追った実験です。ここでは、野生型マウスに加え、Fig.3で登場したMfn1, Mfn2のWKOマウスとミトコンドリアの分裂に関連のあるタンパク質であるMffに突然変異の入ったマウス(Mff-マウス)をそれぞれ用いて、Fig.5のシステムを組み込み、再度筋線維内のミトコンドリアの制御領域の大きさについて観察を行いました。結果、WKOマウスではミトコンドリア制御領域が小さくなり、反対にMff-マウスでは領域が大きくなりました。
以上のことから、OXPHOSをたくさん使う筋線維や代謝環境においては、筋線維内のミトコンドリアの伸長がおこり、その伸長制御にはMfn1かMfn2の少なくとも一方が関与していることが分かりました。加えて、筋線維内のミトコンドリアは近傍の核によって制御されており、こちらもOXPHOSをたくさん使う筋線維ほど一つの核が制御する領域が大きいことが分かりました。制御領域の大きさを決める因子としては、拡大方向にMfn1もしくはMfn2が関与しており、縮小へはMffが関与していることが分かりました。
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感想:
筋線維タイプ、運動、エネルギー基質について相関はみられたものの因果関係についての実験や言及については深追いされていませんでした。ミトコンドリアの制御領域がなぜ細胞質とは異なり制約されているのかについても更なる実験が必要と思われます。ですが、主に収縮様式に関連する指標によって分類される筋線維タイプを代謝に関連のあるミトコンドリアとの関連性で追っていったところはとても面白いものでした。また、単一核の制御領域についても、そもそも多核細胞がどうやって細胞内のイベントを制御しているのか考える際にとても有意義な情報が示されたと感じました。


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by Fujii-group | 2016-12-20 21:13 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

古市JC

Nat Med. 2016 Aug;22(8):897-905.
Loss of fibronectin from the aged stem cell niche affects the regenerative capacity of skeletal muscle in mice.
Lukjanenko L, Jung MJ, Hegde N, Perruisseau-Carrier C, Migliavacca E, Rozo M, Karaz S, Jacot G, Schmidt M, Li L, Metairon S, Raymond F, Lee U, Sizzano F, Wilson DH, Dumont NA, Palini A, Fässler R, Steiner P, Descombes P, Rudnicki MA, Fan CM, von Maltzahn J, Feige JN, Bentzinger CF.

 今回紹介する論文はサテライト細胞のニッチに関する内容です。骨格筋再生のキープレイヤーであるサテライト細胞は加齢や疾患によって、その増殖・分化・自己複製能が衰えます。その要因の一つに細胞外マトリクスの変化が挙げられます。
 著者たちは若齢と高齢のマウスの骨格筋を薬剤で損傷させ、再生する過程でそれらを採取、プロテオームに供し、タンパク発現の変化を網羅的に解析しました。加齢によって細胞外基質の遺伝子群の発現が大きく変動していることが明らかとなり、その中でも再生時に一過的に発現が亢進するフィブロネクチンは、高齢マウスではその発現上昇が弱いことが分かりました。フィブロネクチンはサテライト細胞自身からも発現していますが、量的に免疫細胞や造血細胞などのLineage-positive cell由来のものが圧倒的に多いようでした。
 著者たちは筋再生時に一過的に増加してサテライト細胞のニッチを作るフィブロネクチンが、筋の再生能力に重要であると考えました。実際にサテライト細胞をフィブロネクチンで培養すると生存率が高まりました。阻害剤やノックアウトマウスを用いた実験から、フィブロネクチンは細胞接着分子であるインテグリンを介して、接着斑キナーゼFAKを活性化することが分かりました。In vitro、In vivoにおいて加齢したマウスの骨格筋にフィブロネクチンをレスキューすると、FAKの活性化によって筋の再生能力が回復することが示されました。
 フィブロネクチンはサテライト細胞の老化に関わると想像され、サルコペニアの重要な治療ターゲットとなり得ると著者たちは考えています。
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by Fujii-group | 2016-12-13 18:32 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(H口)

Glucose Concentration and Streptomycin Alter In Vitro Muscle Function and Metabolism
J. Cell. Physiol. 230: 1226–1234, 2015.
ALASTAIR KHODABUKUS AND KEITH BAAR

 細胞培養条件は実験室間で変化することができ、細胞培養のために最適化されています。本研究では、人工筋肉を5.5mMの低グルコースまたは25mMの高グルコース非存在下またはストレプトマイシン存在下で培養し、C2C12の機能と謝に及ぼす影響を調査しています。
骨格筋は収縮動態、筋原線維中のタンパク質のアイソフォーム、代謝酵素、ミトコンドリアの密度などが異なり、機能的に多様な線維タイプで構成され、主に2つの表現型に分類できます。1つは酸化能力、疲労耐性の高い遅筋タイプで、もう一つは解糖能力、収縮能力の高い速筋タイプです。
骨格筋細胞のin vitro培養は、一般的に細胞増殖および生存率を最大化するために栄養豊富な培地として高グルコース(25 mM、450mg/dl)のDMEMで培養することが推奨されています。しかし、健康な哺乳動物の血中グルコース濃度は、4.4~6.1 mM(79mg/dl~109mg/dl)の間の範囲です。それにもかかわらず、筋細胞表現型に対するグルコース濃度の影響は広く研究はされていません。また、筆者らは、ストレプトマイシンはカルシウムチャネルの非選択的阻害剤として作用し、タンパク質合成や分化の成熟度を低下させることが示唆されているとして着目しています。

まず、筆者らはフィブリノーゲンゲル上でC2C12をグルコース濃度が5.5mMの低グルコースまたは25mMの高グルコース、ストレプトマイシン存在下または非存在下の4条件の分化培地で2週間分化させ、人工の筋線維を作製し、収縮の機能を測定しています。Fig.1では自発収縮の頻度を測定した結果、グルコース濃度は影響を及ぼさないのに対してストレプトマイシンの存在下で培養すると自発収縮の頻度が大きく低下することが分かりました。また、Fig.2では発揮張力、収縮・弛緩速度、疲労耐性の測定を行い、低グルコースに比べて高グルコースで培養すると発揮張力、収縮・弛緩速度が大きくなり、疲労耐性が減少することから、速筋タイプの特徴へと誘導されることを示唆しました。

次に、筆者らは骨格筋の機能に関与するタンパク質に着目して、ウエスタンブロッティングを用いて定量しています。Fig.3では、収縮の特性に関与する遅筋、速筋のタイプのMHCは培養条件に関わらず発現には変化がみられなかったのに対して、C2C12の成熟のマーカーであるneo MHCとジストロフィンはストレプトマイシン存在下の条件で発現量の低下がみられました。また、分化のマーカーであるMYF-5、MyoDは、低グルコースの条件で発現量の増加が、myogeninは高グルコースの条件で発現量の増加がみられました。Fig.4では、収縮速度と相関が見られるトロポニンC、T、Iにおける速筋、遅筋のアイソフォームについて確認をしています。その結果、低グルコースの条件に比べて高グルコースの条件で速筋タイプのトロポ二ンCとトロポ二ンIの発現量が増加、遅筋タイプのトロポニンIは発現量が減少しました。一方、低グルコースの条件ではトロポニンアイソフォームに影響を及ぼしませんでした。Fig.5では弛緩速度と相関が見られる細胞内の Ca2+ 濃度を調節するタンパク質の発現量を定量し、速筋のCSQとSERQAはストレプトマイシンに関係なく高グルコースの条件で発現量の増加がみられ、速筋でのみ発現が見られるパルブアルブミンはストレプトマイシンが非存在下の高グルコースの条件下でのみ発現がみられました。これらの結果から、筆者らは高グルコース条件での培養がトロポニンと細胞内の Ca2+ 濃度を調節するタンパク質の発現量を変化させ、機能を速筋タイプの特徴へと誘導したと考察しました。

同様に、筆者らは代謝に関わるタンパク質として、Fig.6で解糖系、ミトコンドリアの電子伝達鎖、脂肪酸代謝のタンパク質の発現量を見ています。その結果、低グルコースの条件に比べ、高グルコースの条件で解糖系のGLUT4とPFKでは発現量が有意に増加し、脂肪酸代謝系のMCADの発現量が増加、LCAD、VLCAD、CPT-1の発現量が減少の現象がみられました。これらの結果から、筆者らは培地のグルコース濃度が高グルコースの条件で解糖系タンパク質の発現量が増加したことで解糖系能力が高くなり、酸化能力が低くなったことにより、解糖系の代謝へのシフトとそれに伴い疲労耐性が減少したと考察しています。

今回の実験より、グルコースの濃度とストレプトマイシンはin vitroでの骨格筋培養細胞の機能と代謝に影響があることがわかりました。グルコース濃度は細胞質中からCa2+ 濃度を調節するタンパク質、トロポニンアイソフォーム、および解糖と脂肪酸代謝に関与するタンパク質量を調節し、培地のグルコース濃度を高グルコースにすると骨格筋培養細胞の特徴を速筋タイプへとシフトさせます。一方、ストレプトマイシンは収縮の機能と疲労耐性を遅筋の特徴へとシフトさせるが、成熟度を低下させるため培地へと添加するべきではないと言及しています。そのため、ストレプトマイシンとグルコース濃度は骨格筋培養細胞の成熟度と機能と代謝の特徴を変えることができると結論しています。


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by Fujii-group | 2016-11-16 17:52 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(K宮)

Peroxiredoxin 3 has a crucial role in the contractile function of skeletal muscle by regulating mitochondrial homeostasis
Free Radical Biology and Medicine 77(2014) 298-306
Lee KP, Shin YJ, Cho SC, Lee SM, Bahn YJ, Kim JY, Kwon ES, Jeong DY, Park SC, Rhee SG, Woo HA, Kwon KS.

H(2)O(2)を含む活性酸素種(ROS)の異常な増加は、骨格筋に様々な影響を与えるとされています。ROSは筋体積の減少や筋分化の抑制の要因であるほか、筋ジストロフィー等の筋疾患への関与が示唆されています。本研究では、Peroxiredoxin 3の全身性ホモ欠失マウスを用いて、ミトコンドリア内のROSの増加が骨格筋に与える影響を調べています。
Peroxiredoxin 3(Prx3)は、抗酸化タンパク質であるPeroxiredoxinのアイソフォームの1つです。Prx3はミトコンドリアやサイトゾルに存在しており、主な働きはミトコンドリア内のH(2)O(2)の約90%を処理するとされる還元機能です。筆者らは、Prx3-KOマウスではこの機能が失われ、ミトコンドリア内のROSが増加することにより、骨格筋に何らかの影響が見られることを期待していました。Prx3-KOマウスを用いた先行研究では、ROSの増加が脂肪細胞の分化に影響を与えることを報告しています。
まず筆者らは、このマウスから単離した初代培養細胞において、分化誘導後にPrx3の発現量が上昇する点に着目しました。つまり、Prx3が骨格筋の分化に影響を何らかの影響を与えると考えました。Fig.1では分化前後の細胞形態・分化マーカーをWTとKOで比較していますが、Supplemetary Dataを含め、分化には特に差は見られませんでした。
次に筆者らは、Prx3の主な作用場所であるミトコンドリアに着目しました。Fig.2ではミトコンドリア内のROSを定量し、予想通り、ROSがKOマウス由来の初代培養細胞でWTに対し有意に増加していることを示しました。一方で、ミトコンドリア内のH(2)O(2)の約90%を処理するという報告に対し、ROSの増加はWTの約1.5倍に留まりました。Fig.3では、初代培養細胞および摘出骨格筋でミトコンドリアの形態を観察しました。いずれにおいても、ミトコンドリア形態の異常が見られ、ROSの増加がミトコンドリアの恒常性に関与する可能性を示唆しました。またFig.6では、ミトコンドリアの膜電位がKOにおいてWTと異なることを示しました。 Fig.4ではミトコンドリアの機能に着目し、mtDNAおよびATP量の定量を行い、いずれもWTに対し有意に減少していることが分かりました。
これらの結果から、筆者らはミトコンドリアの融合・分離による恒常性が、ROSの増加で乱されていると考察しました。Fig.5では、ミトコンドリア融合・分離を制御するタンパク質の発現量を比較しました。その結果、KOでは融合のレギュレーターであるMitofusin1,2の発現量減少が見られ、先行研究と合致する結果を得ました。最後に、このようなミトコンドリアの恒常性不全・機能不全が、骨格筋の収縮機能に与える影響を評価しました。最大握力(Grip Strength Test)と強縮時の収縮力に差がなかった一方、収縮刺激の繰り返しによる疲労は、KOでより急速に進むことが分かりました。
以上から筆者らは、Prx3はROSの除去を介してMitofusin1,2の発現を安定化し、ミトコンドリアの融合・分離による恒常性を保つ重要分子であると結論付けています。しかしながら、Prx群を始めとする他の抗酸化タンパク質の作用を評価していないことや、それぞれの結果の繋がりに対する因果関係が示されないなど、この時点では課題を残した研究であったと考えられました。


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by Fujii-group | 2016-10-31 12:02 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCの内容(I上)

先日行われたジャーナルクラブで紹介したまとめです。4年生になって初めての担当でした。

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CDK4 and cyclin D1 allow human myogenic cells to recapture growth property without compromising differentiation potential
Gene Therapy (2011) 18, 857–866; doi:10.1038/gt.2011.44; published online 14 April 2011
K Shiomi, T Kiyono, K Okamura, M Uezumi, Y Goto, S Yasumoto, S Shimizu and N Hashimoto

ヒトの筋肉の病気を解明するためには、ヒト筋細胞を使用した研究が不可欠です。しかし、培養細胞は継代を重ねると、増殖・分化能力がだんだんと損なわれていきます。そこで筆者らは、先行研究で行われたヒト未分化筋細胞の不死化プロトコルを改善し、不死化ヒト未分化筋細胞の系統を樹立しました。
先行研究では、「Hu5/E18」という、Hu5(初代培養ヒト未分化筋細胞)を hTERT(テロメラーゼの逆転写酵素) と 16型ヒトパピローマウイルス遺伝子 E7 の発現によって不死化した細胞を作製に成功しました。しかしHu5/E18は、分裂にかかる時間が長い(35 h;初代培養細胞より約12 h長い)、E7が細胞の他の機能に影響を与える恐れがある、という問題点を抱えていました。さらに今回の論文において、Hu5/E18は筋管分化の間に核が分裂してしまう新たな問題が発覚しました。
そこで筆者らは、Hu5にCDK4R24C(変異型サイクリン依存的キナーゼ4)、サイクリンD1、hTERTの3つの遺伝子を強制発現させ、効率的に不死化することに成功しました。これらの3つの遺伝子のうち、CDK4R24CとサイクリンD1を、ヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターの制御下で発現している不死化細胞を「Hu5/KD」、Tet-Off® System 制御下で発現している不死化細胞を「Hu5/TKD」と名付けました。
Hu5/KDとHu5/TKDは、初期継代の間の初代培養ヒト筋細胞と同じくらいの速度で分裂し、適切な培養状況の下で、骨形成と脂肪生成分化を経ました。また、筋損傷をした免疫不全マウスの筋にHu5/KD、Hu5/TKDを移植したところ、これらの細胞は筋線維へと分化しました。なお、分化したあとで核が分裂することはありませんでした。
Hu5/TKDをドキシサイクリン処理した実験により、ヒト未分化筋細胞の増殖能力は、CDK4R24CとサイクリンD1に完全に依存していることがわかりました。
CDK4R24C、サイクリンD1、hTERTの3つの遺伝子の発現は、リー病患者に由来する未分化ヒト筋細胞も不死化しました。
この論文において発表された不死化プロトコルは、ヒト未分化筋細胞の倍加時間と分化ポテンシャルを損なうことなく、高い増殖能力を取り戻すことが可能となりました。ただし、CDK4R24CとサイクリンD1複合体の活性がとても高いため、ターゲットではない何か他の分子をリン酸化してしまう可能性を捨てきることはできません。


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by Fujii-group | 2016-10-20 17:46 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ M田

Fnip1 regulates skeletal muscle fiber type specification, fatigue resistance, and susceptibility to muscular dystrophy:PNAS:January 13, 2015:Vol. 112: no.2

今回の論文はFnip1の欠損により遅筋化が起こるという論文である。
骨格筋は自身を構成しているタンパク質の一つであるmyosin heavy chain(MHC)の種類によって4つのタイプに分類される(Type I, Type IIa, Type IIx, Type IIb)。その中でもSlow Typeとして分類されるType IやType IIaはミトコンドリアの量が多いことが知られている。ミトコンドリアは細胞内において糖や脂質からエネルギー貯蔵物質(ATP)を作り出す細胞内小器官である。ミトコンドリアの量の上昇は糖や脂質代謝の亢進につながることから、Slow Typeの増加は、肥満、脂質異常症および2型糖尿病といった生活習慣病に対して効果があると考えられている。ヒトやマウスにおいて持久トレーニングを行うとSlow Typeの骨格筋が増えるということが知られているが、細胞内のメカニズムについてはいまだ明らかにされていないことが多く存在する。
今回の論文は、N-ethyl-N-nitorosourea(ENS)という点突然変異を引き起こす薬剤による順遺伝学的手法から見つかってきたFLCN-interacting protein 1(Fnip1)の欠損マウス(Fnip1 Null)を用いている。Fig.1では、Fnip1の欠損によりType I線維が増加したことを組織学的手法によって示している。ミトコンドリアに存在するタンパク質の染色、ATPaseによるType Iの染色、slow type筋線維のマーカー(MyH7)の染色および、電顕によるミトコンドリア量の観察からType IがFnip1の欠損により増加していることが明らかとなった。また、Fnip1Nullでは筋線維間の血管の数が増加していること、加えて筋線維の断面積が小さくなっていることがわかった。Fig.2においてもqPCRとウエスタンブロットによってType IがFnip1 Nullで増加したことを確認している。Fnip1 Nullにおいて骨格筋内で酸素を運搬するタンパク質(Myoglobin), Troponin Slow type, MyH7のmRNAが増加していた。一方、Type IIbのマーカーのmRNAは減少し、Myoglobin・MyH7・ミトコンドリア内膜に存在するタンパク質(CytoC)の量は増加していた。
先行研究によりFnip1がAMPKと結合することが示されていることから、AMPKのリン酸化およびAMPKのターゲットとなる因子の発現量の確認を行った(Fig.3)。結果、AMPK(Thr172)のリン酸化がFnip1 Nullで上昇していることが分かった。また、AMPKによりリン酸化される分子も一部についてはリン酸化が上昇していることが分かった(pACC1)。加えて、AMPKのターゲットとなるPGC1αについてもタンパク質、mRNAともにFnip1 Nullで上昇していた。Fig.3の結果から、著者らはAMPKのリン酸化がFnip1を欠損することで恒常的に生じ、それに伴い下流の因子の活性化も上昇したと述べている。
骨格筋の機能面からType Iが上昇したことを次のFig.4では示している。こちらは、麻酔下のマウスの脛骨神経を電気刺激し、アキレス腱の張力を計測するという方法をとっている。結果、Fnip1 Nullでは最大発揮張力が減少していた。一方で収縮力の持続性は上昇し、収縮後の回復力も上昇していた。これらの特徴はType Iの特徴と一致することから、著者らはFnip1の欠損によりType Iが上昇したと述べている。
Fig.5では、ミトコンドリア新生に関与しており、Fig.3の結果から上昇が確認されたPGC1αとFnip1の欠損によるType Iの上昇の関連性についてみている。著者らはこれらの関連性を観察するためにPGC1αとFnip1のダブルノックアウトマウスを作成した。このマウスは、見た目として赤筋化がみられたもののMyH7, Myoglobin, CytoCの発現量がFnip1 Nullに比べて減少していた。よって、Fnip1の欠損によるType Iの上昇にはPGC1αが必要であることがわかった。
Fig.6では、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)モデルマウス(mdx4CV)を用いて筋ジストロフィーの症状が緩和するかどうかについて実験を行っている。DMDの症状としてミトコンドリアの機能不全が生じることが知られている。Fnip1 Nullではミトコンドリア新生に関するPGC1αが上昇していたことから、著者らはFnip1の欠損がDMDの症状を緩和するのではないかと考えた。方法としてFig.6ではmdx4CVとFnip1 Nullのダブルトランスジェニックマウス(mdxFnip1)を使用している。結果、mdxFnip1では筋損傷が軽減していた。しかし、Utrophin(ジストロフィンのホモログ)がmdxFnip1でmdx4CVよりも発現量が低くなっていることから、ジストロフィンがFnip1の欠損によって改善されるわけではなかった。
以上より、Fnip1はType Iの発現を抑制していることが示唆された。また、そのメカニズムにはPGC1αが関与していることも分かった。さらに、Fnip1の欠損はDMDの筋損傷を和らげる効果があることも明らかとなった。しかし、Fnip1のType I抑制への作用機序については仮説にとどまっており、今回のデータからは明らかにされなかった。また、DMDの症状緩和についても詳細な解明はなされていなかった。


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by Fujii-group | 2016-07-11 10:51 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

分子生物学、運動生化学、生理学研究、の日々


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