カテゴリ:ラボミーティングの内容( 60 )

JCまとめ:K宮

A novel lysophosphatidylcholine acyl transferase activity is expressed by peroxiredoxin 6
Aron B. Fisher, Chandra Dodia, Elena M. Sorokina, Haitao Li, Suiping Zhou, Tobias Raabe, and Sheldon I. Feinstein
Journal of Lipid Research, 2016 Apr;57(4):587-596

 この論文では、Prdx6のLysophosphatidylcholine Acyl Transferase (LPCAT)活性について論じています。先行研究において、Prdx6はリン脂質からsn-2位の脂肪酸と取り去るPLA2活性を持つことが報告されています。この活性は細胞膜リン脂質の修復や、肺胞でのDipalmitoyl Phosphatidyl Choline(DPPC, 肺胞の柔軟性を保つ主な要素)の産生に重要とされてきました。筆者らは、Prdx6のアミノ酸配列にLPCAT motifが含まれることに着目し、Prdx6がリゾリン脂質への脂肪酸付加を触媒するLPCAT活性を持つという仮説で研究を進めています。
 Fig.3-6とtable.3-5では、RIにより標識したリゾリン脂質と補酵素を試験管内で反応させ、Prdx6のLPCAT活性の性質を探っています。この結果、リゾリン脂質と補酵素CoAからリン脂質が生成され、Prdx6がLPCAT活性を持つことが示されました。また、pH条件とPrdx6のリン酸化が活性を変化させることも明らかになりました。pHは7から4へと酸性に傾くことで活性が約3倍上昇し、リン酸化はpH4で約10倍、pH7で約30倍活性を高めます。またこの活性は、CI-976という阻害剤により特異的に阻害できることが分かりました。さて、このLPCAT活性を既報のPLA2活性と比較すると、反応の指標であるKm, Vmaxは既報のPLA2反応の値より高くなっています。また、リゾリン脂質産生(PLA2活性)と脂肪酸付加(LPCAT活性)の2つの反応が、基質と離れることなく連続的に起こることを示唆しました。
 最後に筆者は、Peroxidase活性, PLA2活性, LPCAT活性に関与するアミノ酸配列について検討しています。各活性を司るドメインについて1塩基置換を生じたサンプルを用い、PLA2活性とLPCAT活性の双方を測定しました。このうち、H26はcatalytic triad(PLA2活性)とLPCAT motifの重複部位ですが、変異体ではLPCAT活性は失われませんでした。そこで、LPCAT motifの他の部位であるD31の変異体を測定したところ、LPCAT活性は有意に減少しました。このことから、LPCAT活性には特にこの部位が重要であることが示されました。
 以上より、Prdx6はLPCAT活性を実際に持つことが実証され、その活性にはPLA2活性との類似や連携があることが示唆されました。PLA2活性とLPCAT活性を1つの酵素が併せ持つことは稀であり、6つのアイソフォームがあるPeroxiredoxinの中でもPrdx6はユニークな存在と言えます。


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by Fujii-group | 2017-06-15 15:11 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ:M田

‘’Myogenic Progenitor Cells Control Extracellular Matrix Production by Fibroblasts during Skeletal Muscle Hypertrophy’’
C. S. Fry, T. J. Kirby, K. Kosmac, J. J. McCarthy, C. A. Peterson
Cell Stem Cell, Vol.20, Issue 1, 5 January 2017, Pages 56–69

今回の研究は、活性化したサテライト細胞がmicroRNAを含んだエクソソームを分泌し、筋組織に存在する線維芽細胞の線維新生を抑制しているというものです。
過負荷による筋肥大の際、サテライト細胞がない状態では、サテライト細胞がある場合よりも、筋肥大が減弱し、線維化がおこるという現象が著者らの先行研究で観察されました。これに加えて、初代培養による筋芽細胞(MPC)の培養上清を同じ筋から得られた線維芽細胞(Fb)に添加すると、Fbのコラーゲン遺伝子群の発現が抑制されるということも観察されました。これらの点を踏まえ著者らは、サテライト細胞が何か液性因子を分泌することで線維化を抑制し、筋肥大がおこりやすい環境をサテライト細胞が整えているのではないかという仮説をたてました。
今回採用した筋肥大をおこす方法は、手術によりマウスの下肢筋の一部を除去し、残した筋部位に代償的な負荷をかけ、残した部位を過負荷によって筋肥大させるというやり方です(SA)。また、サテライト細胞の除去は、薬剤投与によってサテライト細胞特異的にジフテリア毒素が作用させ、サテライト細胞を細胞死へ導くという遺伝子組み換えマウス(SC-Dep)を用いて行いました。
はじめに、線維化が生じるにあたり、サテライト細胞が存在しないことで線維芽細胞の数が増加していないかどうかの確認を行いました(Fig.1)。SA二週間での組織切片の結果より、SAによるTcf4陽性細胞(Tcf4:線維芽細胞のマーカーの一つ)の増加が確認されたものの、サテライト細胞の有無による増加への影響は確認されませんでした。また、線維芽細胞において線維新生を促進する経路とされるTGF-βとSMADの経路もサテライト細胞の有無による変化はありませんでした(Fig.S2)。
線維芽細胞の数や線維化を促す経路に変化がないにも関わらず、サテライト細胞が無いことでSAにより線維化が生じる原因を探るため、著者らは先行研究でのMPCの培養上清でFbのコラーゲン遺伝子群の発現が抑制された結果に注目しました。今回の研究ではMPCの培養上清からエクソソームを抽出しFbに添加して培養すると、Fbのコラーゲン遺伝子の発現が抑制されることが明らかとなりました(Fig.2)。また、MPCの培養上清から抽出したエクソソーム内の核酸を染色し、Fbに添加すると染色した核酸がFb内に移行していることが観察されました(Fig.2)。これらのことから、著者らはmicroRNA(核酸)を含んだMPCからのエクソソームがFbに取り込まれ、Fbのコラーゲンを翻訳抑制していると考えました。
MPC、MPCからのエクソソームおよびFbのmicroRNAを網羅的に定量したところ、MPCとMPCのエクソソームに存在量が多く、Fbで少ないというmiR-206が見つかりました(Table 1)。miR-206の標的遺伝子をWebツール(TargetScan)によって検索したところ、コラーゲン新生の制御因子であるRrbp1が候補にあがりました。そこで、FbにmiR-206を強制的に導入し、Rrbp1のタンパク質発現量を確認したところ、Rrbp1の発現量が減少していることが確認されました。また、これに連動してコラーゲン遺伝子群のmRNA発現も減少していました(Fig.3)。Rrbp1の減少は、MPCのエクソソームをFbに添加して培養した際にも確認されています(Fig.3)。加えて、Rrbp1のmiR-206認識配列を用いたルシフェラーゼアッセイの結果からmiR-206がRrbp1の翻訳抑制をしていることも確認されました(Fig.S3)。一方で、miR-206の相補鎖を導入してmiR-206の活性を抑制すると、Rrbp1のタンパク質発現が亢進し、コラーゲン遺伝子群のmRNAの発現も上昇するという結果も確認できました(Fig.3)。以上のことからin vitroの実験においてMPCのエクソソーム内のmiR-206がFbのRrbp1の翻訳抑制をおこし、コラーゲンの新生を抑制していることが示されました。
著者らはin vitroで確認された現象がin vivoにおいても生じているかどうか確認を行いました。サテライト細胞がある状態(SC-WT)ではSA二週間において、筋組織内でmiR-206の発現が上昇しているが、SC-Depにおいては上昇が確認されませんでした(Fig.4)。反対にSC-WTで発現が抑制されているRrbp1タンパク質やコラーゲン遺伝子群のmRNAはSC-Depで発現が上昇していました(Fig.4)。実際にSC-DepでSAを8週間経験した筋組織では線維質がSC-WTにくらべ増加していることが確認されました(Fig.5および先行研究)。
しかしながら、SAを一週間経験した後に薬剤投与によってサテライト細胞を除去すると、線維化ならびに筋肥大の減弱は生じませんでした(Fig.5)。これについて著者らは、細胞外基質の制御においてサテライト細胞は、過負荷による筋肥大の初期(一週間前後)において重要であり、それ以降はサテライト細胞を介さない別の制御機構があるのではないかと言及しています。
以上を踏まえ、著者らは過負荷による筋肥大の初期(一週間前後)において、サテライト細胞は線維芽細胞に向けてmiR-206を含んだエクソソームを分泌しており、届いたmiR-206がRrbp1の発現抑制を介して線維芽細胞からの過剰な線維新生を抑制し、筋肥大の妨げとなる線維化を防いでいるというモデルを提唱しました。
今回の研究に対する懸念点としては、①SAが普段の筋肥大を本当に再現しているのかという点、②MPCとFbの分離方法に曖昧さが残る点、③サテライト細胞からの分泌という提唱において、in vitroの実験でしか確認されておらず、in vivoで本当にサテライト細胞に由来するmiR-206が線維芽細胞に作用しているのか確認ができていない点などがあげられます。
サテライト細胞の減少(消失)が線維化を引き起こしているとするデータから、加齢によるサテライト細胞の減少との関連等について気になりましたが、これについてはDiscussionで一言述べられている程度でした。


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by Fujii-group | 2017-05-26 08:34 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCのまとめ:古市

Science. 2016 Jul 8;353(6295)
Asymmetric division of clonal muscle stem cells coordinates muscle regeneration in vivo.
Gurevich DB, Nguyen PD, Siegel AL, Ehrlich OV, Sonntag C, Phan JM, Berger S, Ratnayake D, Hersey L, Berger J, Verkade H, Hall TE, Currie PD.

「骨格筋が損傷すると、サテライト細胞が増殖、融合して傷ついた筋線維を修復する。」
 僕も授業や講演で必ず口にする台詞ですが、これは本当でしょうか。筋の再生に対するサテライト細胞の振る舞いは、in vitroの実験結果をもとに推測されたものです。つまり、これまでは誰もin vivo(生体内)でサテライト細胞が筋線維を修復する様子を観察したことが無いので、それが本当だとは断言できませんでした。
 生きている骨格筋でサテライト細胞が再生する様子を捉えたのが今回の論文です。このグループは、ゼブラフィッシュ(身体が透明で、遺伝子改変による標識が簡単)の筋肉に針やレーザーを当て、筋の再生をイメージングすることに成功しました。
 フィッシュにもサテライト細胞は存在するようで、Myf5(休止、活性、増殖期に発現)の制御領域にGFPを挿入したTgフィッシュを使い、再生過程を観察しました。サテライト細胞は分裂しながら損傷部位を遊走し、双極伸展した後に融合(分化)していきました。面白いことに、筋芽細胞が分化する前には近傍の筋線維からfilopodia(糸状仮足)が伸びて遊走している細胞を捕まえるそうです。
 哺乳類では転写因子Pax7が休止状態のサテライト細胞のマーカーとして使用されますが、フィッシュではcMet(受容体型チロシンキナーゼ)が休止期サテライト細胞のマーカーであることが示されました。cMet(mCherry)とMyf5(GFP)のダブルTgフィッシュを使って、サテライト細胞が非対称性分裂(細胞分裂した際、一方は筋発生、もう一方は自己複製する)することが証明されました。cMet陽性細胞を特異的に削除するシステム(cMetのプロモーターでKalta4が発現し、それがUAS配列に結合することでnfsBが発現する。nfsBはMetronidazoleを活性化(毒化)するので、その細胞は死んでしまう。)を使って、サテライト細胞が無くなると筋再生が悪くなることも示されています。
 最後に、Zebrabowという蛍光標識によって隣り合う細胞の由来が同一(クローン)かどうかを調べる手法で、再生した筋線維のClonalityを検証しました。これはCreがランダムにlox配列を切る性質を利用し、GFP、CFP、RFPのどれかが発現して、さらにそれが3コピーあるので細胞が10種類の色をランダムに発色するというシステムです。その結果、再生部位はRainbowにならず単一色となったため、フィッシュではたった1つのサテライト細胞で複数の筋線維を構築していたことが示されました。
 この論文がPublishされる数ヶ月前にマウスのTAで筋再生をイメージングした論文(Webster et al., 2016, Cell Stem Cell)が発表されましたが、詳細な機序を示している分、本論文の方が読み応えがありました。ただし、フィッシュは筋線維あたりのサテライト細胞数が少ないなど種間の相違があり、この現象が哺乳類でも生じているかはまだ分かりません。


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by Fujii-group | 2017-05-13 12:31 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(井上)

Cell. Mol. Life Sci.  DOI 10.1007/s00018-016-2445-1
Received: 26 August 2016/Revised: 2 December 2016/Accepted: 19 December
Retinoic acid maintains human skeletal muscle progenitor cells in an immature state
M El Haddad et al.

この論文は、ヒト筋前駆細胞にレチノイン酸(RA)を添加すると分化が起こらず、未熟状態を保つという内容です。RAシグナル伝達経路の活性化が筋芽細胞の分化および分化転換を防ぎ、未成熟細胞特有遺伝子の発現を増進することが示されています。

初代ヒト筋芽細胞を用いて、培地にRAを添加して分化させたところ、10-6MのRAで細胞の分化が完全に阻害されることがわかりました。また、RAをウォッシュすると筋芽細胞が分化に進むことから、RAによる分化阻害は可逆的です。

ヒト筋芽細胞にレチノイン酸レセプター(RAR)とレチノイドXレセプター(RXR)のアンタゴニストを添加して分化誘導したところ、RARアンタゴニストを加えたものでは、RA添加による分化阻害と同等の結果が得られました。この結果から、RAがRAR活性化を介して筋芽細胞分化を阻害しているのではないか、と筆者らは考えています。
また、ヒト筋芽細胞にRARインバースアゴニストであるBMS493を添加したところ、分化の促進が見られました。さらに、siRNAを用いて、RARの3つのアイソフォームであるRARα、RARβ、RARγをノックダウンさせたところ、RARβとRARγをノックダウンさせた筋芽細胞で分化の促進が見られました。これらの結果から、RARはヒト筋芽細胞の分化を負に調節していると考えられます。

ヒト筋芽細胞にRAを添加すると、MYOD遺伝子ファミリーの発現を阻害しますが、PAX7およびPAX3の発現を維持させます。休止期と活性期のマウスサテライト細胞の発現遺伝子を比較したところ、Pax3・Pax7、またRA生合成に関与する全ての遺伝子の発現レベルは、休止期で有意に高くなりました。これらの結果は、RAシグナリングが休止期のサテライト細胞でより活性化していることを示しています。
ヒト筋芽細胞において、siRNAを用いてMYODをノックダウンし、筋原性遺伝子の発現を解析しました。ノックダウンした細胞ではMyf5、PAX7、PAX3のmRNAが大幅に増加したのに対し、MyoDの非常に強力な減少を示しました。これらの結果は、MYODの不活性化がヒト筋芽細胞を、より未成熟にすることを示します。

結論として筆者らは、RAはヒト筋芽細胞の分化を阻害し、未熟期を保つことを示唆しました。そして筆者らは、RAによる分化の阻害は、RAがMYODファミリー遺伝子の発現を阻害した結果であると考えているようです。また、筋肉細胞におけるRARβとRARγが、RARαとは異なる生物学的機能を有することが示唆されています。
全体としてこれらの結果は、筋芽細胞にRAを添加して培養することで、筋芽細胞を移植した際に、移植細胞のコロニー形成率を増加させる可能性があることを示唆しています。


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by Fujii-group | 2017-03-02 18:15 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(T橋)

2017, Nature Communications 8, 14328
Pten is necessary for the quiescence and maintenance of adult muscle stem cells
Feng Yue, Pengpeng Bi, Chao Wang, et al.

 今回の論文はPtenがサテライト細胞の休止状態の維持に必要であるという内容です。サテライト細胞は骨格筋の組織幹細胞であり、骨格筋の再生で中心的な役割を果たします。サテライト細胞による骨格筋の再生は内的・外的な様々な因子によって制御されていることが知られています。先行研究では、Ptenが神経幹細胞や造血幹細胞の自己複製や分化を制御することが示されました。そこで著者らは骨格筋の再生を制御する新たな因子の候補としてPtenに着目しました。PtenはインスリンシグナルにおいてPIP3を脱リン酸化する酵素でありAktのリン酸化を負に制御します。

 サテライト細胞でのPtenの発現を調べたところ、休止期または活性化したサテライト細胞にのみ発現していることが分かりました。骨格筋再生におけるPtenの機能を明らかにするために、著者らはサテライト細胞特異的にPtenをKOしたマウスを作製し表現型解析を行いました。結果、PtenKOマウスでは休止期サテライト細胞数が減少しており骨格筋の再生能力が低下していることが明らかとなりました。これは、PtenをKOしたことによってサテライト細胞が休止性を失い分化に進行したためです。

 続いて著者らはPtenによる休止期サテライト細胞数の減少がどのようなメカニズムを起こっているのか調べました。PtenをKOするとAktのリン酸化が上昇することから、著者らはまずAkt-mTORシグナルに着目しました。PtenKOマウスではAkt-mTORシグナルが活性化していましたが、mTORの活性を阻害してもPtenKOによるサテライト細胞の減少はレスキューされませんでした。このことから、Akt-mTORシグナルはサテライト細胞数の減少に関与していないことが分かりました。

 次に著者らはAkt-FOXO1-Notchシグナルに着目しました。PtenをKOするとFOXO1の細胞質移行が促進されており、Notchの標的遺伝子の転写が抑制されていることが分かりました。さらにFOXO1はNotch受容体の細胞内ドメイン(NICD)と結合するタンパク質であるRBPJkと結合し、Notchの標的遺伝子の転写を制御していることが分かりました。そこでNotchの活性をレスキューすると、PtenKOによるサテライト細胞の減少が抑えられ、休止期サテライト細胞の数が野生型と同じレベルまでレスキューされました。しかし、骨格筋の再生能力はレスキューされませんでした。これはNotchシグナルを活性化したことによって自己複製が促進され分化が阻害されたためだと考えられます。最後に著者らはPtenとNotchシグナルの間には様々なシグナル経路のクロストークが存在し、骨格筋の再生を制御するとまとめています。


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by Fujii-group | 2017-02-15 11:01 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(川端)

Diabetes. 2016 Jan;65(1):188-200.
Obesity impairs skeletal muscle regeneration via inhibition of AMP-activated protein kinase.
Xing Fu, Meijun Zhu, Shuming Zhang, Marc Foretz, Benoit Viollet, Min Du


 今回紹介した論文は、肥満によるAMPK活性の低下と骨格筋再生に関する内容です。肥満・2型糖尿病といった代謝性疾患は世界中で重大な健康問題となっており、筋再生の低下やAMPK活性の低下と関与しています。しかし肥満・2型糖尿病の筋再生の低下におけるAMPKの役割は未だ明らかではありません。

 筆者らのグループはAMPKと筋形成についての先行研究を既に行っており、AMPKα1 KOマウスにおいて筋管形成とMyogenin発現が低下していることを明らかにしています。これらの知見から、AMPKα1が骨格筋の再生を促進し、肥満がAMPKα1の活性を阻害することで骨格筋再生を妨げると筆者らは仮定しました。

 著者らは、通常マウスと肥満マウスの骨格筋をCTXで損傷させ、筋再生を誘導した後にそれらを摘出しました。それらのAMPKα1活性、筋再生およびサテライト細胞数を比較したところ、全て肥満マウスで低下していることが明らかになりました。
 肥満マウスにおける筋再生・サテライト細胞数の低下は、AMPKα1活性の低下に起因するものであると考えられました。実際に、AMPKα1 KOマウスを用いて同様の実験を行ったところ、肥満マウスと同様に、筋再生およびサテライト細胞数の減少が見られました。
 また、肥満マウスにAICAR(AMPK活性剤)を投与し、AMPK活性をレスキューすることで、筋再生とサテライト細胞数を回復させることに成功しました。しかし、サテライト細胞特異的AMPKα1 KO肥満マウスにAICAR投与しても、筋再生の回復が見られませんでした。このことから、筋再生において、サテライト細胞におけるAMPKα1の活性化が重要であることが示されました。

 したがって、AMPKは骨格筋再生に関与していると考えられ、肥満・2型糖尿病患者の骨格筋再生を改善するための治療標的となります。


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by Fujii-group | 2017-02-04 11:33 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(M田)

Mitochondrial Dynamics Is a Distinguishing Feature of Skeletal Muscle Fiber Types and Regulates Organellar Compartmentalization
著者:Prashant Mishra, Grigor Varuzhanyan, Anh H. Pham, David C. Chan
2015, Cell Metabolism 22, 1033–1044

要約:
今回の論文は筋線維タイプ、運動およびエネルギー基質の違いによって骨格筋内のミトコンドリアの形態がどんな変化を引き起こすか追った論文です。ミトコンドリアにおいておこるエネルギー生産反応である酸化的リン酸化経路(OXPHOS)をより使う筋線維や状況にあるほどミトコンドリアの融合がおきるというものです。また、この融合に関してMitofusin 1 (Mfn1), Mitofusin 2 (Mfn2)のどちらかが必要であることが示されています。
加えて、一つの細胞内(筋線維内)に複数の核を保持している骨格筋細胞において、一つの核がどの範囲までのミトコンドリアを制御しているのかについて、サテライト細胞を用いて示されています。結果、細胞質中に存在するタンパク質は筋線維全体にわたって拡散し、ミトコンドリアに向かうタンパク質は、発現された核の近傍において筋線維内にパッチ状にとどまることが示されました。また、この支配領域に関してもミトコンドリアの融合に関連するMfn1, Mfn2および分裂に関連するMitochondrial Fission Factor (Mff)が関連していることが示されました。

結果:
全体を通して、ミトコンドリアの形態観察はミトコンドリアへ移行する蛍光タンパク質(Mito-Dendra2)を持った遺伝子組み換えマウスを用いています。
Fig.1,2では筋線維タイプ別にミトコンドリアの形態が異なることが示されています。エネルギー産生過程においてOXPHOSによる反応に依存しているとされるType IおよびType IIAではミトコンドリアの融合が数多く観察され、このタイプに分類される筋線維は筋線維上のどこかで必ず融合した伸長型のミトコンドリアを持っていることが分かりました。一方、OXPHOSに依存しない筋線維タイプであるTypeIIxおよびType IIBでは観察した筋線維内のうち90%は伸長型のミトコンドリアを持っておらず、断片型のミトコンドリアのみ筋線維内に保持していました。Fig.3ではこの融合がどんな分子の関与によって生じているのか調べました。著者らは先行研究における知見からミトコンドリアの融合に関連するタンパク質であるMfn1, Mfn2に注目しました。野生型マウス、Mfn1のみノックアウトマウス、Mfn2のみノックアウトマウスおよびMfn1とMfn2のダブルノックアウトマウス(WKOマウス)を用いて、ミトコンドリアの形態観察を行ったところ、WKOマウスのみにて伸長型のミトコンドリアがなくなることが確認されました。この結果から伸長型のミトコンドリア生成にはMfn1もしくはMfn2の少なくとも一つが必要であることが明らかとなりました。
Fig.4では運動とエネルギー基質によるミトコンドリアの形態への影響を観察しています。運動による影響については蛍光タンパク質によって筋線維タイプ別に色分けができるマウスを用いて、4週間自主的運動をさせました。その結果、運動群ではType IIxもしくはType IIBからType IIAへのタイプ移行が足底筋において生じました。蛍光タンパク質による色分けによりType IIAである筋線維においては、必ず伸長型のミトコンドリアが含まれていることが明らかとなりました。続いて、エネルギー基質による影響を観察しました。長趾伸筋を取り出し培養皿において、OXPHOSを使用しなくてはエネルギーが生成できない基質(アセト酢酸)にて一晩培養を行ったところ、Type IIxとType IIBにおいても断片型が消失し、伸長型のミトコンドリアが観察されました。
Fig.5では多核細胞である筋線維において、筋線維内にある一つの核がどのくらいの範囲を制御しているのかについて調べました。タモキシフェン誘導により骨格筋の組織幹細胞であるサテライト細胞特異的にMito-Dendra2を発現するマウスをタモキシフェン誘導なしに使用しました。これは、一定の確率でタモキシフェン誘導なしでもシステムが作動してしまうというシステムの「漏れ」を逆手に利用した方法です。これにより、漏れのおきたサテライト細胞由来の核が筋線維に供給されることで、多核細胞である筋線維において一つ一つの核がどの領域までのミトコンドリアを制御しているのか蛍光観察によって調べることが可能となります。また今回は、Mito-Dendra2と同時に細胞質に向かうタンパク質として黄色い蛍光タンパク質(YFP)をこのシステムに組み込み、筋線維内における蛍光を観察しました。その結果、細胞質中のタンパク質(YFP)は筋線維全体に拡散していることが確認された一方、ミトコンドリアに向かうタンパク質(Mito-Dendra2)は、核の近傍にのみ局在し、特定の領域があることが示されました。さらに、このミトコンドリアの制御領域はType IIAにおいてType IIxやType IIBに比べて大きいことが明らかとなりました(Type Iは今回見ていなかった)。Fig.6ではFig.5で観察された制御領域の大きさがどんな分子によってコントロールされているのかについて追った実験です。ここでは、野生型マウスに加え、Fig.3で登場したMfn1, Mfn2のWKOマウスとミトコンドリアの分裂に関連のあるタンパク質であるMffに突然変異の入ったマウス(Mff-マウス)をそれぞれ用いて、Fig.5のシステムを組み込み、再度筋線維内のミトコンドリアの制御領域の大きさについて観察を行いました。結果、WKOマウスではミトコンドリア制御領域が小さくなり、反対にMff-マウスでは領域が大きくなりました。
以上のことから、OXPHOSをたくさん使う筋線維や代謝環境においては、筋線維内のミトコンドリアの伸長がおこり、その伸長制御にはMfn1かMfn2の少なくとも一方が関与していることが分かりました。加えて、筋線維内のミトコンドリアは近傍の核によって制御されており、こちらもOXPHOSをたくさん使う筋線維ほど一つの核が制御する領域が大きいことが分かりました。制御領域の大きさを決める因子としては、拡大方向にMfn1もしくはMfn2が関与しており、縮小へはMffが関与していることが分かりました。
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感想:
筋線維タイプ、運動、エネルギー基質について相関はみられたものの因果関係についての実験や言及については深追いされていませんでした。ミトコンドリアの制御領域がなぜ細胞質とは異なり制約されているのかについても更なる実験が必要と思われます。ですが、主に収縮様式に関連する指標によって分類される筋線維タイプを代謝に関連のあるミトコンドリアとの関連性で追っていったところはとても面白いものでした。また、単一核の制御領域についても、そもそも多核細胞がどうやって細胞内のイベントを制御しているのか考える際にとても有意義な情報が示されたと感じました。


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by Fujii-group | 2016-12-20 21:13 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

古市JC

Nat Med. 2016 Aug;22(8):897-905.
Loss of fibronectin from the aged stem cell niche affects the regenerative capacity of skeletal muscle in mice.
Lukjanenko L, Jung MJ, Hegde N, Perruisseau-Carrier C, Migliavacca E, Rozo M, Karaz S, Jacot G, Schmidt M, Li L, Metairon S, Raymond F, Lee U, Sizzano F, Wilson DH, Dumont NA, Palini A, Fässler R, Steiner P, Descombes P, Rudnicki MA, Fan CM, von Maltzahn J, Feige JN, Bentzinger CF.

 今回紹介する論文はサテライト細胞のニッチに関する内容です。骨格筋再生のキープレイヤーであるサテライト細胞は加齢や疾患によって、その増殖・分化・自己複製能が衰えます。その要因の一つに細胞外マトリクスの変化が挙げられます。
 著者たちは若齢と高齢のマウスの骨格筋を薬剤で損傷させ、再生する過程でそれらを採取、プロテオームに供し、タンパク発現の変化を網羅的に解析しました。加齢によって細胞外基質の遺伝子群の発現が大きく変動していることが明らかとなり、その中でも再生時に一過的に発現が亢進するフィブロネクチンは、高齢マウスではその発現上昇が弱いことが分かりました。フィブロネクチンはサテライト細胞自身からも発現していますが、量的に免疫細胞や造血細胞などのLineage-positive cell由来のものが圧倒的に多いようでした。
 著者たちは筋再生時に一過的に増加してサテライト細胞のニッチを作るフィブロネクチンが、筋の再生能力に重要であると考えました。実際にサテライト細胞をフィブロネクチンで培養すると生存率が高まりました。阻害剤やノックアウトマウスを用いた実験から、フィブロネクチンは細胞接着分子であるインテグリンを介して、接着斑キナーゼFAKを活性化することが分かりました。In vitro、In vivoにおいて加齢したマウスの骨格筋にフィブロネクチンをレスキューすると、FAKの活性化によって筋の再生能力が回復することが示されました。
 フィブロネクチンはサテライト細胞の老化に関わると想像され、サルコペニアの重要な治療ターゲットとなり得ると著者たちは考えています。
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by Fujii-group | 2016-12-13 18:32 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(H口)

Glucose Concentration and Streptomycin Alter In Vitro Muscle Function and Metabolism
J. Cell. Physiol. 230: 1226–1234, 2015.
ALASTAIR KHODABUKUS AND KEITH BAAR

 細胞培養条件は実験室間で変化することができ、細胞培養のために最適化されています。本研究では、人工筋肉を5.5mMの低グルコースまたは25mMの高グルコース非存在下またはストレプトマイシン存在下で培養し、C2C12の機能と謝に及ぼす影響を調査しています。
骨格筋は収縮動態、筋原線維中のタンパク質のアイソフォーム、代謝酵素、ミトコンドリアの密度などが異なり、機能的に多様な線維タイプで構成され、主に2つの表現型に分類できます。1つは酸化能力、疲労耐性の高い遅筋タイプで、もう一つは解糖能力、収縮能力の高い速筋タイプです。
骨格筋細胞のin vitro培養は、一般的に細胞増殖および生存率を最大化するために栄養豊富な培地として高グルコース(25 mM、450mg/dl)のDMEMで培養することが推奨されています。しかし、健康な哺乳動物の血中グルコース濃度は、4.4~6.1 mM(79mg/dl~109mg/dl)の間の範囲です。それにもかかわらず、筋細胞表現型に対するグルコース濃度の影響は広く研究はされていません。また、筆者らは、ストレプトマイシンはカルシウムチャネルの非選択的阻害剤として作用し、タンパク質合成や分化の成熟度を低下させることが示唆されているとして着目しています。

まず、筆者らはフィブリノーゲンゲル上でC2C12をグルコース濃度が5.5mMの低グルコースまたは25mMの高グルコース、ストレプトマイシン存在下または非存在下の4条件の分化培地で2週間分化させ、人工の筋線維を作製し、収縮の機能を測定しています。Fig.1では自発収縮の頻度を測定した結果、グルコース濃度は影響を及ぼさないのに対してストレプトマイシンの存在下で培養すると自発収縮の頻度が大きく低下することが分かりました。また、Fig.2では発揮張力、収縮・弛緩速度、疲労耐性の測定を行い、低グルコースに比べて高グルコースで培養すると発揮張力、収縮・弛緩速度が大きくなり、疲労耐性が減少することから、速筋タイプの特徴へと誘導されることを示唆しました。

次に、筆者らは骨格筋の機能に関与するタンパク質に着目して、ウエスタンブロッティングを用いて定量しています。Fig.3では、収縮の特性に関与する遅筋、速筋のタイプのMHCは培養条件に関わらず発現には変化がみられなかったのに対して、C2C12の成熟のマーカーであるneo MHCとジストロフィンはストレプトマイシン存在下の条件で発現量の低下がみられました。また、分化のマーカーであるMYF-5、MyoDは、低グルコースの条件で発現量の増加が、myogeninは高グルコースの条件で発現量の増加がみられました。Fig.4では、収縮速度と相関が見られるトロポニンC、T、Iにおける速筋、遅筋のアイソフォームについて確認をしています。その結果、低グルコースの条件に比べて高グルコースの条件で速筋タイプのトロポ二ンCとトロポ二ンIの発現量が増加、遅筋タイプのトロポニンIは発現量が減少しました。一方、低グルコースの条件ではトロポニンアイソフォームに影響を及ぼしませんでした。Fig.5では弛緩速度と相関が見られる細胞内の Ca2+ 濃度を調節するタンパク質の発現量を定量し、速筋のCSQとSERQAはストレプトマイシンに関係なく高グルコースの条件で発現量の増加がみられ、速筋でのみ発現が見られるパルブアルブミンはストレプトマイシンが非存在下の高グルコースの条件下でのみ発現がみられました。これらの結果から、筆者らは高グルコース条件での培養がトロポニンと細胞内の Ca2+ 濃度を調節するタンパク質の発現量を変化させ、機能を速筋タイプの特徴へと誘導したと考察しました。

同様に、筆者らは代謝に関わるタンパク質として、Fig.6で解糖系、ミトコンドリアの電子伝達鎖、脂肪酸代謝のタンパク質の発現量を見ています。その結果、低グルコースの条件に比べ、高グルコースの条件で解糖系のGLUT4とPFKでは発現量が有意に増加し、脂肪酸代謝系のMCADの発現量が増加、LCAD、VLCAD、CPT-1の発現量が減少の現象がみられました。これらの結果から、筆者らは培地のグルコース濃度が高グルコースの条件で解糖系タンパク質の発現量が増加したことで解糖系能力が高くなり、酸化能力が低くなったことにより、解糖系の代謝へのシフトとそれに伴い疲労耐性が減少したと考察しています。

今回の実験より、グルコースの濃度とストレプトマイシンはin vitroでの骨格筋培養細胞の機能と代謝に影響があることがわかりました。グルコース濃度は細胞質中からCa2+ 濃度を調節するタンパク質、トロポニンアイソフォーム、および解糖と脂肪酸代謝に関与するタンパク質量を調節し、培地のグルコース濃度を高グルコースにすると骨格筋培養細胞の特徴を速筋タイプへとシフトさせます。一方、ストレプトマイシンは収縮の機能と疲労耐性を遅筋の特徴へとシフトさせるが、成熟度を低下させるため培地へと添加するべきではないと言及しています。そのため、ストレプトマイシンとグルコース濃度は骨格筋培養細胞の成熟度と機能と代謝の特徴を変えることができると結論しています。


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by Fujii-group | 2016-11-16 17:52 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

JCまとめ(K宮)

Peroxiredoxin 3 has a crucial role in the contractile function of skeletal muscle by regulating mitochondrial homeostasis
Free Radical Biology and Medicine 77(2014) 298-306
Lee KP, Shin YJ, Cho SC, Lee SM, Bahn YJ, Kim JY, Kwon ES, Jeong DY, Park SC, Rhee SG, Woo HA, Kwon KS.

H(2)O(2)を含む活性酸素種(ROS)の異常な増加は、骨格筋に様々な影響を与えるとされています。ROSは筋体積の減少や筋分化の抑制の要因であるほか、筋ジストロフィー等の筋疾患への関与が示唆されています。本研究では、Peroxiredoxin 3の全身性ホモ欠失マウスを用いて、ミトコンドリア内のROSの増加が骨格筋に与える影響を調べています。
Peroxiredoxin 3(Prx3)は、抗酸化タンパク質であるPeroxiredoxinのアイソフォームの1つです。Prx3はミトコンドリアやサイトゾルに存在しており、主な働きはミトコンドリア内のH(2)O(2)の約90%を処理するとされる還元機能です。筆者らは、Prx3-KOマウスではこの機能が失われ、ミトコンドリア内のROSが増加することにより、骨格筋に何らかの影響が見られることを期待していました。Prx3-KOマウスを用いた先行研究では、ROSの増加が脂肪細胞の分化に影響を与えることを報告しています。
まず筆者らは、このマウスから単離した初代培養細胞において、分化誘導後にPrx3の発現量が上昇する点に着目しました。つまり、Prx3が骨格筋の分化に影響を何らかの影響を与えると考えました。Fig.1では分化前後の細胞形態・分化マーカーをWTとKOで比較していますが、Supplemetary Dataを含め、分化には特に差は見られませんでした。
次に筆者らは、Prx3の主な作用場所であるミトコンドリアに着目しました。Fig.2ではミトコンドリア内のROSを定量し、予想通り、ROSがKOマウス由来の初代培養細胞でWTに対し有意に増加していることを示しました。一方で、ミトコンドリア内のH(2)O(2)の約90%を処理するという報告に対し、ROSの増加はWTの約1.5倍に留まりました。Fig.3では、初代培養細胞および摘出骨格筋でミトコンドリアの形態を観察しました。いずれにおいても、ミトコンドリア形態の異常が見られ、ROSの増加がミトコンドリアの恒常性に関与する可能性を示唆しました。またFig.6では、ミトコンドリアの膜電位がKOにおいてWTと異なることを示しました。 Fig.4ではミトコンドリアの機能に着目し、mtDNAおよびATP量の定量を行い、いずれもWTに対し有意に減少していることが分かりました。
これらの結果から、筆者らはミトコンドリアの融合・分離による恒常性が、ROSの増加で乱されていると考察しました。Fig.5では、ミトコンドリア融合・分離を制御するタンパク質の発現量を比較しました。その結果、KOでは融合のレギュレーターであるMitofusin1,2の発現量減少が見られ、先行研究と合致する結果を得ました。最後に、このようなミトコンドリアの恒常性不全・機能不全が、骨格筋の収縮機能に与える影響を評価しました。最大握力(Grip Strength Test)と強縮時の収縮力に差がなかった一方、収縮刺激の繰り返しによる疲労は、KOでより急速に進むことが分かりました。
以上から筆者らは、Prx3はROSの除去を介してMitofusin1,2の発現を安定化し、ミトコンドリアの融合・分離による恒常性を保つ重要分子であると結論付けています。しかしながら、Prx群を始めとする他の抗酸化タンパク質の作用を評価していないことや、それぞれの結果の繋がりに対する因果関係が示されないなど、この時点では課題を残した研究であったと考えられました。


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by Fujii-group | 2016-10-31 12:02 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

分子生物学、運動生化学、生理学研究、の日々


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