本日のニュースで日本の大学の研究者がパーキンソン病の患者脳にウイルスを使った遺伝子治療である程度の成功を収めていることが紹介されておりました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090814-00000616-yom-sci
全くわからない人には「遺伝子治療って、人間のDNAが全部解読されたのであったら簡単にできるのではないの?」なんて思うかも知れませんが、そう簡単に外部から遺伝子をいれて置き換わってしまう(遺伝子操作ができてしまう)ほど、我々の体は単純にできていないのです。

 実験的に培養している細胞に遺伝子を入れることは、近年では簡便になりました。なぜなら、培養細胞は皮膚もなければ、なにもない。発現させたい遺伝子を運び屋(ウイルスとかプラスミドとかです。ベクターともよばれます)につなげて、細胞を飼っている培養液に入れるだけです。

 しかし、遺伝子の発現を動物の特定の領域や臓器に長期間発現させることはそう簡単ではありません。そのため、実験動物では卵の段階で、遺伝子操作して、子供を産ませて、育て、遺伝子操作した動物を作ります(トランスジェニック動物)。簡単そうですが、うまくいかないことも多々あり、うまく行っても実験開始から、結果を得るまで数年が必要となります。

 もっと、単純に遺伝子を操作できる(外部から遺伝子を簡単にいれることができる)方法があれば、実験が進むのに・・・と思いませんか?全く無いわけではないのですが、・・・発現がうまくいかなかったり、数日で消滅してしまったりと、完璧な方法ではないようです。
     しかし034.gif!。我がラボが用いている骨格筋ではある程度骨格筋に特異的に、かつ1-2ヶ月間という長い間、特定の遺伝子を発現させることが可能なのです。
どのような方法を用いればよいのでしょうか?
その方法については次回に・・・・。
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by fujii-group | 2009-08-17 19:46 | 研究内容 | Comments(0)

Labの特殊技術

研究室も二年目に入り、少しずつ研究も前に進み始めております。ラボのホームページにも載せておりますが、わがラボには、他のラボにはないであろう・・・という特殊技術がいくつかあります。
本日はその中の一つ「骨格筋を用いたグルコーストランスポートのシステム」を紹介したいと思います。簡単に言うと、骨格筋を試験管内である一定時間培養し、どのくらいの糖を取り込んだか?を測定する方法です。
では、どのような実験にもちいるのでしょうか?
b0136535_12324080.jpg


骨格筋は、インスリンや運動による筋収縮に応じて、糖を取り込む能力があります。つまり、食事後一時的に上がった血糖はインスリンの作用より糖を筋肉に捨てることで、我々の血糖は一定に保たれ、健康でいられるのです。しかしII型糖尿病の患者さんでは筋がインスリンに反応しにくくなっているため、筋の糖の取り込み能力が減少し、つねに血糖値が上昇している状態になります。
研究者たちは、この状況をなんとか科学的に解決することができないか?と様々な実験を行います。
(1)インスリン以外で糖の取り込み能力を高める薬はないか?→いくつかの候補物質を試験管内に入れ筋肉と共存させ、一定時間内に取り込まれた糖を測定。
(2)インスリンの作用を増強させるものはないか?→インスリンと候補物質と筋を試験管内にいれ一定時間内に取り込まれた糖を測定。
(3)糖尿病などでインスリンによる糖取り込みが減少した筋で運動によってインスリンの感受性がよくなるか?→試験管内で筋を運動させ(収縮させる)、インスリンによる効果を検討する・・
など、様々な実験に使用できます。

実験系としては簡単そうに見えますが、筋の取り出しに高い技術を要し、また培養の機器セットアップに非常に、時間がかかります。文章にするととても、単純そうな実験でもその裏には、とても大きな努力があります。
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by fujii-group | 2009-05-09 12:37 | 研究内容 | Comments(0)

餌作り

我々のラボでは「運動が、なぜ健康に良いのか?」という大きなテーマをもって研究を進めております。ずっと以前のブログにも書きましたように、現代の食事で油脂の占める割合が多くなるにつれ、我々は糖尿病をはじめとする生活習慣病に脅かされるようになっております。「美味しいものは食べたい。でも太りたくない、健康でいたい!」というのが、我々の共通の望みではないでしょうか?

このような望みを解決するものの1つとして運動が挙げられます。しかし、運動の健康への効果は、いまだに「経験的に良いから・・・」という漠然とした理由が多く、科学的には未解明な部分が多いのです。そこで、我々も高脂肪食などを食べた時、また、それに運動を組み合わせた時、骨格筋がどのような応答をするのかを分子レベルで検討していっております(していく予定です)。

そのためには、まず高脂肪食を食べるモデルを作らないといけません。このモデル、簡単そうですが、いろいろと労力がいります。まず、わがラボの大学院生が実験を行う前にやっているのは・・・写真にあるようなb0136535_18315587.jpg、大きな乳鉢にえさとなる原料を入れ、混ぜてこねて、写真のような、クッキー状にします。これを餌として動物に与えるのです。高脂肪食は、とても美味しいらしく、動物たちの摂取カロリーも断然伸びます!こうやって我々は太っていくのだろうな・・・ということも実験の行動を見ながら感じることができます。b0136535_1836656.jpg





餌も高脂肪食として市販されているものもありますが、自分たちが特別に混ぜたい物とかある場合は、わがラボがやっているように一つ一つの成分を量って、丹念に混ぜていきます。もちろん、動物の生命の源ですのでバターと小麦粉と砂糖と卵だけでできるクッキーよりたくさんの材料(ビタミンやら様々なものが入ります)が要ります。そして、十分の栄養とカロリー、愛情と、実験成功への期待をいっぱいにつめた餌ができあがります。
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by fujii-group | 2008-12-17 18:37 | 研究内容 | Comments(0)

研究についてその2

現在、大学院生の方が一生懸命立ち上げている実験系があります。それが、in vitro の筋収縮系!これは、摘出した骨格筋を試験管内で下の図のように吊り下げて、その支柱から電気的に刺激を加えることにより、骨格筋を試験管内で収縮させる系です。これによって何ができるのでしょう?
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この系では、骨格筋を体外で電気的に収縮させることができ(つまり摘出筋を運動させると考えてください)、運動時におこる骨格筋の変化の中でも「筋収縮による変化」を、はっきりと知ることができるのです。運動の研究には生体を運動させることで解析することも重要なのですが、生体を使うことによる様々な問題もあります。その例として・・・b0136535_2019267.jpg

例1:運動時には様々な生理的変化を伴うために、骨格筋で起きている変化が、運動による筋収縮で起きた変化なのか?運動時に様々なホルモンが分泌され、それが血液を介して骨格筋に影響を及ぼしたのかを区別することができない。

例2:ある骨格筋内の変化を調べる為に、薬品投与する時に、生体内に投与するには量が多く必要になるが、摘出骨格筋の場合、試験管内のバッファーに必要量だけ準備すればよい。
などの利点があります。

このin vitro筋収縮系、簡単そうに見えるのですが、さまざまな細かい点があり、立ちあげるのが非常に難しいのです。立ち上げにはたくさんの物を揃えないといけません。たとえば必要なものを挙げてみると・・・

(1)試験管内で骨格筋を生かしておくための空気を送る装置(熱帯魚などにあるぶくぶくとエアーがでているものと類似しておりますね)。
(2)体内と同じ温度を保つためのインキュベーター(保温器)
(3)つりさげる為のガラスの器具(写真)
(4)電気刺激を与える為の電極(ガラスの中に埋め込まれてます)
(5)電気刺激を与える装置(発生装置)
(6)電気が実際に筋肉に通っているかどうかを解析する装置(骨格筋の摘出に失敗して筋肉がダメになっていると電流が流れないのです)

まだまだ、あげれば気が遠くなりそうなくらいあります。これをコツコツと手作りしたり、いろいろと調べて、それぞれの会社から購入したり・・・で、ようやく、ここまで立ち上がっております。あと少し!

これができれば結果も出るはず・・・!
来年にはその結果が論文になることを祈って!
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by fujii-group | 2008-12-10 20:23 | 研究内容 | Comments(0)

骨格筋細胞

我々のグループは今年の4月に立ちあがったばかりで、まだまだ明確な結果を出すにはいたっておりません。ですので、なかなか研究内容を詳細に紹介することもできないのですが、本日は我々が研究材料の一つとして使用している骨格筋細胞について紹介します(下の写真がマウスのC2C12骨格筋細胞です。未熟な細胞を分化させて、より骨格筋らしい細胞にしたものです)。骨格筋細胞は高校の教科書にも載っている細胞です。この細胞が集まって組織になって器官になることを考えると、経験的、視覚的に受け入れられやすい細胞の形をしていると思います(鶏のモモ肉や手羽先を食べるときのことを考えてみましょう…)。
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この骨格筋細胞を用いて、運動時におこる筋細胞内での変化を様々に研究していくのです。「様々に研究」の部分が現在格闘中のところです。何か結果が出たら紹介していきたいと思います。この細胞たちの世話もやはり技術が要ります。細胞を生育させる環境は当然のことながら、雑菌によるカビも繁殖しやすい高栄養な場所である為、熟練するまでには、「コンタミ」とよばれる、雑菌汚染を引き起こすことが多々あります(特に夏には・・・)。我がラボでは4年生が細胞を用いた実験をしているのですが、素晴らしいことにいまだに「コンタミ知らず」なのです。きっと扱いがうまいのでしょうね。その扱いのうまさで、今後の結果を期待しましょう!!
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by fujii-group | 2008-12-04 08:58 | 研究内容 | Comments(5)

我々の研究室は、4月から発足した新しい研究室のため、まだ、バリバリと実験する環境には至っておりませんが、コツコツと地味な掃除と、機械や装置の配置変えをおこない、少しずつ研究する段階に入っております。

さて、生物系の実験をされる方にはおなじみの、タンパク質の解析法としてウェスタンブロッティングがあります。これをしたことはない人はいるとしても、”ウェスタンブロッティング”という言葉を知らない生物系研究者がいたらそれはエセ研究者でしょう。それくらい、研究のためには重要な手法です。

現在、ラボでは学生たちがウェスタンブロッティングの練習を始めたのですが、なぜだか!!うまくバンドが検出されないのです。先週から数回繰り返しているのですが、うっすらとバンドらしきものは見えるのですが、どうも検出されない模様。一次抗体は信頼・実績のある会社のもので、管理人自体も何度も使用したことがあり、問題ないと考えられます。では、なぜなのでしょう?可能性として

(1)学生たちが何か方法を間違っている→ 何度もチェックしたのですが、間違っている様子が見えません。
(2)メンブレンが何か問題→ 確かに古いメンブレンなのですが、低分子量非特異的バンドがきれいに検出されているのです。
(3)二次抗体が悪い→ 確かに新しい会社の二次抗体なので悪い可能性はあるのですが・・。。

研究に失敗はつきものなのですが、こんな基本的なところで躓くとは思ってませんでした。
早めに解決できますよう、努力します。
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by fujii-group | 2008-06-06 20:31 | 研究内容 | Comments(0)

Lab meeting

研究室では一週間に一回ラボミーティングという会議?が行われます。

このミーティングは、研究の途中経過を研究室の皆の前で発表し、皆の意見を聞き、今後の研究に活かす目的で行われます。

発表者は、如何にわかりやすく、まとめられた内容にするか?を考えることで、発表技術を身につけることができます(将来どこに行っても必要な技術ですね)。
また、聞くほうも、聞く技術、つまり、発表者が言っていることを理解して、そこから疑問点を導き出し、そして、それを質問する内容に構成し直す技術が要されます(これが難しいのです)。

研究するには、研究意欲、努力、技術のほかに、プレゼンテーション能力も重要な技術の一つになっていきます。そういう意味で、ラボミーティングは重要な勉強の機会です。

今週は第一回目だったため、今後の方針についてのみの話し合いでした。
みんなでこれから頑張っていきましょう。

さて、最後に第一回目のラボミーティングの教授のお言葉です。

「研究の初級:答えがわかっている命題に対する答えを、きちんと自分で導きだせること。
実験でいえば、ポジティブコントロールなど「出る」とわかってる結果を間違いなく出せる技術。

中級:答えがわからない命題を与えられ、その答えを見つけるために、さまざまなアプローチにより答えを見つけられること。
実験でいえば、&&のシグナル伝達経路がわかっていないから、君、この経路の研究をしなさい、と教授に言われて、それを真剣に取り込むことができること。

上級:何がわかっていないか?を自分で疑問点をみつけて、それに取り組める技術。
つまり、質問を見つけることが、一番難しい技術なのです。たとえば、
1+1という概念をみつけることは1+1が2であるという解をみつける技術よりもはるかに難しいこと。たいていの人は、何が疑問であるかすら、気付かない。それを気付いて研究に導けるようになったらプロですね。」

プロを目指して頑張りましょうね。
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by fujii-group | 2008-04-25 19:00 | 研究内容 | Comments(0)