2017年 05月 13日 ( 1 )

JCのまとめ:古市

Science. 2016 Jul 8;353(6295)
Asymmetric division of clonal muscle stem cells coordinates muscle regeneration in vivo.
Gurevich DB, Nguyen PD, Siegel AL, Ehrlich OV, Sonntag C, Phan JM, Berger S, Ratnayake D, Hersey L, Berger J, Verkade H, Hall TE, Currie PD.

「骨格筋が損傷すると、サテライト細胞が増殖、融合して傷ついた筋線維を修復する。」
 僕も授業や講演で必ず口にする台詞ですが、これは本当でしょうか。筋の再生に対するサテライト細胞の振る舞いは、in vitroの実験結果をもとに推測されたものです。つまり、これまでは誰もin vivo(生体内)でサテライト細胞が筋線維を修復する様子を観察したことが無いので、それが本当だとは断言できませんでした。
 生きている骨格筋でサテライト細胞が再生する様子を捉えたのが今回の論文です。このグループは、ゼブラフィッシュ(身体が透明で、遺伝子改変による標識が簡単)の筋肉に針やレーザーを当て、筋の再生をイメージングすることに成功しました。
 フィッシュにもサテライト細胞は存在するようで、Myf5(休止、活性、増殖期に発現)の制御領域にGFPを挿入したTgフィッシュを使い、再生過程を観察しました。サテライト細胞は分裂しながら損傷部位を遊走し、双極伸展した後に融合(分化)していきました。面白いことに、筋芽細胞が分化する前には近傍の筋線維からfilopodia(糸状仮足)が伸びて遊走している細胞を捕まえるそうです。
 哺乳類では転写因子Pax7が休止状態のサテライト細胞のマーカーとして使用されますが、フィッシュではcMet(受容体型チロシンキナーゼ)が休止期サテライト細胞のマーカーであることが示されました。cMet(mCherry)とMyf5(GFP)のダブルTgフィッシュを使って、サテライト細胞が非対称性分裂(細胞分裂した際、一方は筋発生、もう一方は自己複製する)することが証明されました。cMet陽性細胞を特異的に削除するシステム(cMetのプロモーターでKalta4が発現し、それがUAS配列に結合することでnfsBが発現する。nfsBはMetronidazoleを活性化(毒化)するので、その細胞は死んでしまう。)を使って、サテライト細胞が無くなると筋再生が悪くなることも示されています。
 最後に、Zebrabowという蛍光標識によって隣り合う細胞の由来が同一(クローン)かどうかを調べる手法で、再生した筋線維のClonalityを検証しました。これはCreがランダムにlox配列を切る性質を利用し、GFP、CFP、RFPのどれかが発現して、さらにそれが3コピーあるので細胞が10種類の色をランダムに発色するというシステムです。その結果、再生部位はRainbowにならず単一色となったため、フィッシュではたった1つのサテライト細胞で複数の筋線維を構築していたことが示されました。
 この論文がPublishされる数ヶ月前にマウスのTAで筋再生をイメージングした論文(Webster et al., 2016, Cell Stem Cell)が発表されましたが、詳細な機序を示している分、本論文の方が読み応えがありました。ただし、フィッシュは筋線維あたりのサテライト細胞数が少ないなど種間の相違があり、この現象が哺乳類でも生じているかはまだ分かりません。


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by Fujii-group | 2017-05-13 12:31 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

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