2016年 11月 16日 ( 1 )

JCまとめ(H口)

Glucose Concentration and Streptomycin Alter In Vitro Muscle Function and Metabolism
J. Cell. Physiol. 230: 1226–1234, 2015.
ALASTAIR KHODABUKUS AND KEITH BAAR

 細胞培養条件は実験室間で変化することができ、細胞培養のために最適化されています。本研究では、人工筋肉を5.5mMの低グルコースまたは25mMの高グルコース非存在下またはストレプトマイシン存在下で培養し、C2C12の機能と謝に及ぼす影響を調査しています。
骨格筋は収縮動態、筋原線維中のタンパク質のアイソフォーム、代謝酵素、ミトコンドリアの密度などが異なり、機能的に多様な線維タイプで構成され、主に2つの表現型に分類できます。1つは酸化能力、疲労耐性の高い遅筋タイプで、もう一つは解糖能力、収縮能力の高い速筋タイプです。
骨格筋細胞のin vitro培養は、一般的に細胞増殖および生存率を最大化するために栄養豊富な培地として高グルコース(25 mM、450mg/dl)のDMEMで培養することが推奨されています。しかし、健康な哺乳動物の血中グルコース濃度は、4.4~6.1 mM(79mg/dl~109mg/dl)の間の範囲です。それにもかかわらず、筋細胞表現型に対するグルコース濃度の影響は広く研究はされていません。また、筆者らは、ストレプトマイシンはカルシウムチャネルの非選択的阻害剤として作用し、タンパク質合成や分化の成熟度を低下させることが示唆されているとして着目しています。

まず、筆者らはフィブリノーゲンゲル上でC2C12をグルコース濃度が5.5mMの低グルコースまたは25mMの高グルコース、ストレプトマイシン存在下または非存在下の4条件の分化培地で2週間分化させ、人工の筋線維を作製し、収縮の機能を測定しています。Fig.1では自発収縮の頻度を測定した結果、グルコース濃度は影響を及ぼさないのに対してストレプトマイシンの存在下で培養すると自発収縮の頻度が大きく低下することが分かりました。また、Fig.2では発揮張力、収縮・弛緩速度、疲労耐性の測定を行い、低グルコースに比べて高グルコースで培養すると発揮張力、収縮・弛緩速度が大きくなり、疲労耐性が減少することから、速筋タイプの特徴へと誘導されることを示唆しました。

次に、筆者らは骨格筋の機能に関与するタンパク質に着目して、ウエスタンブロッティングを用いて定量しています。Fig.3では、収縮の特性に関与する遅筋、速筋のタイプのMHCは培養条件に関わらず発現には変化がみられなかったのに対して、C2C12の成熟のマーカーであるneo MHCとジストロフィンはストレプトマイシン存在下の条件で発現量の低下がみられました。また、分化のマーカーであるMYF-5、MyoDは、低グルコースの条件で発現量の増加が、myogeninは高グルコースの条件で発現量の増加がみられました。Fig.4では、収縮速度と相関が見られるトロポニンC、T、Iにおける速筋、遅筋のアイソフォームについて確認をしています。その結果、低グルコースの条件に比べて高グルコースの条件で速筋タイプのトロポ二ンCとトロポ二ンIの発現量が増加、遅筋タイプのトロポニンIは発現量が減少しました。一方、低グルコースの条件ではトロポニンアイソフォームに影響を及ぼしませんでした。Fig.5では弛緩速度と相関が見られる細胞内の Ca2+ 濃度を調節するタンパク質の発現量を定量し、速筋のCSQとSERQAはストレプトマイシンに関係なく高グルコースの条件で発現量の増加がみられ、速筋でのみ発現が見られるパルブアルブミンはストレプトマイシンが非存在下の高グルコースの条件下でのみ発現がみられました。これらの結果から、筆者らは高グルコース条件での培養がトロポニンと細胞内の Ca2+ 濃度を調節するタンパク質の発現量を変化させ、機能を速筋タイプの特徴へと誘導したと考察しました。

同様に、筆者らは代謝に関わるタンパク質として、Fig.6で解糖系、ミトコンドリアの電子伝達鎖、脂肪酸代謝のタンパク質の発現量を見ています。その結果、低グルコースの条件に比べ、高グルコースの条件で解糖系のGLUT4とPFKでは発現量が有意に増加し、脂肪酸代謝系のMCADの発現量が増加、LCAD、VLCAD、CPT-1の発現量が減少の現象がみられました。これらの結果から、筆者らは培地のグルコース濃度が高グルコースの条件で解糖系タンパク質の発現量が増加したことで解糖系能力が高くなり、酸化能力が低くなったことにより、解糖系の代謝へのシフトとそれに伴い疲労耐性が減少したと考察しています。

今回の実験より、グルコースの濃度とストレプトマイシンはin vitroでの骨格筋培養細胞の機能と代謝に影響があることがわかりました。グルコース濃度は細胞質中からCa2+ 濃度を調節するタンパク質、トロポニンアイソフォーム、および解糖と脂肪酸代謝に関与するタンパク質量を調節し、培地のグルコース濃度を高グルコースにすると骨格筋培養細胞の特徴を速筋タイプへとシフトさせます。一方、ストレプトマイシンは収縮の機能と疲労耐性を遅筋の特徴へとシフトさせるが、成熟度を低下させるため培地へと添加するべきではないと言及しています。そのため、ストレプトマイシンとグルコース濃度は骨格筋培養細胞の成熟度と機能と代謝の特徴を変えることができると結論しています。


[PR]
by Fujii-group | 2016-11-16 17:52 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)