A novel lysophosphatidylcholine acyl transferase activity is expressed by peroxiredoxin 6
Aron B. Fisher, Chandra Dodia, Elena M. Sorokina, Haitao Li, Suiping Zhou, Tobias Raabe, and Sheldon I. Feinstein
Journal of Lipid Research, 2016 Apr;57(4):587-596
この論文では、Prdx6のLysophosphatidylcholine Acyl Transferase (LPCAT)活性について論じています。先行研究において、Prdx6はリン脂質からsn-2位の脂肪酸と取り去るPLA2活性を持つことが報告されています。この活性は細胞膜リン脂質の修復や、肺胞でのDipalmitoyl Phosphatidyl Choline(DPPC, 肺胞の柔軟性を保つ主な要素)の産生に重要とされてきました。筆者らは、Prdx6のアミノ酸配列にLPCAT motifが含まれることに着目し、Prdx6がリゾリン脂質への脂肪酸付加を触媒するLPCAT活性を持つという仮説で研究を進めています。
Fig.3-6とtable.3-5では、RIにより標識したリゾリン脂質と補酵素を試験管内で反応させ、Prdx6のLPCAT活性の性質を探っています。この結果、リゾリン脂質と補酵素CoAからリン脂質が生成され、Prdx6がLPCAT活性を持つことが示されました。また、pH条件とPrdx6のリン酸化が活性を変化させることも明らかになりました。pHは7から4へと酸性に傾くことで活性が約3倍上昇し、リン酸化はpH4で約10倍、pH7で約30倍活性を高めます。またこの活性は、CI-976という阻害剤により特異的に阻害できることが分かりました。さて、このLPCAT活性を既報のPLA2活性と比較すると、反応の指標であるKm, Vmaxは既報のPLA2反応の値より高くなっています。また、リゾリン脂質産生(PLA2活性)と脂肪酸付加(LPCAT活性)の2つの反応が、基質と離れることなく連続的に起こることを示唆しました。
最後に筆者は、Peroxidase活性, PLA2活性, LPCAT活性に関与するアミノ酸配列について検討しています。各活性を司るドメインについて1塩基置換を生じたサンプルを用い、PLA2活性とLPCAT活性の双方を測定しました。このうち、H26はcatalytic triad(PLA2活性)とLPCAT motifの重複部位ですが、変異体ではLPCAT活性は失われませんでした。そこで、LPCAT motifの他の部位であるD31の変異体を測定したところ、LPCAT活性は有意に減少しました。このことから、LPCAT活性には特にこの部位が重要であることが示されました。
以上より、Prdx6はLPCAT活性を実際に持つことが実証され、その活性にはPLA2活性との類似や連携があることが示唆されました。PLA2活性とLPCAT活性を1つの酵素が併せ持つことは稀であり、6つのアイソフォームがあるPeroxiredoxinの中でもPrdx6はユニークな存在と言えます。