血合いってどこですか?―お魚の筋肉の話― :T村日記

最近の当ラボのミーティングは雑談から始まります。そこで話題になり、F教授が興味を示されると、その内容に関してブログの執筆を命ぜられます。今回は、(修論で忙しい) T村が担当させて頂きました。

筋肉には、瞬発力を発揮する速筋線維と持久力を発揮する遅筋線維があります。
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ヒトを含む哺乳類の場合には、ひとつの筋のうちで速筋線維と遅筋繊維が混在しているのですが、魚類の場合には速筋と遅筋の分布が明確に異なることが知られています。そう、赤身か白身かという話です。赤身は遅筋、白身は速筋に相当します。遅筋が赤く見えるのは、ミオグロビンという酸素を貯蔵するタンパク質が豊富に含まれているからです。

持久的に運動するためには、ミトコンドリアの酸化的リン酸化を介した持続的なATPの供給が必要となります。その反応に酸素を必要とするため、遅筋には酸素を蓄えておくミオグロビンが多いです。一方で速筋は、筋肉に蓄えられたグリコーゲンをピルビン酸に分解する解糖系を介してATPを供給します。この反応には酸素を必要としないため、速筋にはミオグロビンが少ないです。ミオグロビンは、2価の鉄イオンを配位したポルフィリン錯体のヘムを中心に持ち、このヘムが酸素と直接結合します。ポルフィリンは鉄イオンを配位することで平面構造が歪み、吸収スペクトルが短波長側へシフトし、青色光を吸収するようになります。従って、ヘムに当たった光のうち短波長の青色光は吸収され、長波長の赤色光のみが反射されます。目に入ってきた赤色光は、網膜の視細胞である錐体に発現するオプシンと結合したレチナールの光異性化を誘導し、オプシンの立体構造の変化を介して下流のGタンパク・・・(以下略)・・・ミオグロビンが「赤く」見えます。

話を戻して・・・実は、白身のお魚にも遅筋があります。それが血合い (血合筋) です。一方で白身の部分は普通筋と呼ばれており、魚の種類によって血合筋の割合は異なります。
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通常の遊泳の際には血合筋が活動しており、エサを補食したり、敵から逃げる際の瞬間的な動作に普通筋が活動します。従って、専ら海底に身を潜めているヒラメなどは普通筋が多く、遠洋を回遊するマグロなどは血合筋が発達しています。
筋形成の初期の段階で、この血合筋を構成する遅筋の筋細胞が魚の深部から表層へと移動してくることが近年の研究から明らかになったそうです。いったいどのような発生のメカニズムなのか、哺乳類の筋形成とはどう異なるのか非常に興味深いと思いました。
ちなみにサケは白身 (普通筋) です。赤色に見えるのはアスタキサンチンという色素成分のせいです。アスタキサンチンは藻類に含まれており、食物連鎖によりサケに濃縮されます。エビやカニが赤いのと同じ理由です。
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by Fujii-group | 2014-12-18 19:27 | メンバーの日記 | Comments(0)