人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ラボミーティングの内容

M藤さんJCのまとめ

RNA-Guided Human Genome Engineering via Cas9

Prashant Mali,Luhan Yang,Kevin M. Esvelt,John Aach,Marc Guell, James E. DiCarlo,
Julie E. Norville, George M. Church
Science, 2013 Feb 15;339(6121):823-6

本論文では、細菌の免疫機構の一種として知られていたCRISPR/Casシステムを応用して、ヒトのゲノムが編集できることが述べられている。
 まず、typeⅡ CRISPR/Cas システムを働かせるために、2つのコンストラクトを作製した。1つは、CMVプロモーターの下流にヒトCas9蛋白の配列を組み込んだコンストラクト。もう1つは、U6ポリメラーゼⅢプロモーターの下流に目的の遺伝子配列を標的としたcrRNAとtracrRNAを融合させたguide RNA(gRNA)を組み込んだコンストラクトである。この、CRISPR/Casシステムでは、NGGというprotospacer-adjacent motif(PAM)の上流の20bpがCas9による切断の標的となるため、理論的にはGGがあればゲノムのいかなる部分も標的となる。
 この2つのコンストラクトをHEK293T細胞に発現させ、GFPレポーターを発現させるアッセイ系を作製した。HEK293T細胞には予めGFP遺伝子にAAVS1領域の68bp断片と終止コドンを挿入して遺伝子を破壊したコンストラクトを恒常的に発現させた。gRNAはAAVS1断片内のT1とT2を標的とするものを作製した。また、相同組み換え効率の比較のためにT1とT2に結合するTALENも作製した。結果、相同組み換え効率はTALEN0.37%、 Cas9+T1 gRNA3.26%、Cas9+T2gRNA8.07%であった。トランスフェクション後のGFP陽性細胞の出現時間はTALENが40時間、CRISPR/Casは20時間であった。
 次にHEK293T細胞、K562細胞、iPS細胞において、nativeのAAVS1領域をgRNA
で切断することによって起きる非相同末端結合の頻度を調べることで、遺伝子ノックアウトへの応用を試みた。結果、T1 gRNA、T2 gRNAを用いてnativeのAAVS1領域を切断した後の非相同末端結合の発生率は、HEK293T細胞で10%と25%、K562細胞で13%と38%、iPS細胞で2%と4%であった。また、T1 gRNAとT2 gRNAを同時に導入すると、その間の19bp断片の欠損を起こすことができた。この方法で多重ゲノム編集ができることが分かった。
 最後に、CRISPR/Casによる相同組み換えを用いて、DNAドナーをnativeのAAVS1領域に組み込むことを試みた。AAVS1遺伝子内にpuromycin耐性遺伝子とGFP遺伝子を組み込んだコンストラクトを作製し、CRISPR/Casによる騒動組み換えを用いて293T細胞またはiPS細胞のAAVS1領域に導入し、導入された細胞をpuromycin selectionを用いて選択した。結果、ゲノムとドナーの境界が正しくシークエンスされ、この細胞にGFPが正しく発現していることが確認できた。
 以上のように、目的のDNA配列に相同なgRNAを発現させるという方法によってゲノム編集が可能となったが、これはさまざまな用途に用いることができる。バイオインフォマティクスを用いて、約190,000種のgRNAで標的にできる配列を挙げたところ、これはヒトゲノムの遺伝子exonの約40.5%を標的にするものであった。
 CRISPR/Casを用いたゲノム編集は、確実かつ多重性に哺乳類ゲノムを編集できる方法として、非常に有用なものであると結論づけられている。
by Fujii-group | 2014-02-06 19:57 | ラボミーティングの内容 | Comments(0)

分子生物学、運動生化学、生理学研究、の日々


by Fujii-group
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31